「KOBEとんぼ玉ミュージアム」は、館長の宮本恭庸さんが、2005年に開館。元々は飲食店経営をされていましたが、震災後にクラフトショップを開店したのを機に、「とんぼ玉の魅力を広めたい」と始めた施設博物館です。
そもそも「とんぼ玉」とは、穴の開いたガラスの装飾玉。トンボの複眼に似ていることから、日本ではこの名が付きました。1~2cmくらいのサイズが多いですが、形も模様も様々です。
ここではとんぼ玉だけでなく、炎でガラスを溶かして成形する「ランプワーク」の技法で作られたガラス工芸品を数多く展示しています。現在ではガスバーナーを使うので「バーナーワーク」とも呼ばれます。
高級ジュエリーショップのような館内は2015年に展示をリニューアル。以前は時系列に並んでいましたが、技法やデザインなどのテーマ別の展示に変わりました。
展示のベースになっているのは、国内有数の古代ガラスの蒐集家・羽原明徳氏のコレクションで、古代から現代まで、とんぼ玉を中心としたガラス工芸の歴史を紹介しています。
展示品の中で最古のものは、なんと約3500年前! 中でも古いのは、陶器の原型にガラスをコートした「ファイアンス」の技法で作られたものです。自由に成形できるので、特に古代エジプトで広く流行したんだとか。
写真は鳥の頭を持つエジプトの神・ホルス。高さは2~3㎝ほどですが、とにかく造形が細かい。当時の王族が金に糸目をつけず作らせたそうですが、どんな人だったんでしょうか。興味が湧きます。
紀元前13世紀ごろ、古代エジプトで心臓をモチーフに作られたアミュレット。当時は心臓に知性が宿ると考えられていたため、今でいうお守りとして作られたそうです。
粘土などの芯に溶かしたガラスを巻き付けて、模様をつける「コアガラス」という技法で、きれいな波状の文様が特徴です。
展示の中には、古代の破片から同じ技法で現代に復元した作品もあります。この小皿は、エジプトの宮殿から出土した、紀元前14世紀の破片から再現したもの。
同じ破片があのニューヨークの「メトロポリタン美術館」にも展示されているそうなので、地味ながら歴史的価値はワールドクラスかと。
現代でもお馴染みの「モザイクガラス」も、大昔からありました。金太郎飴と同じ要領で、どこを切っても同じ模様が現れます。
中でも目を引いたのがエジプトの人面玉。何ともとぼけた愛嬌のある表情は、ゆるキャラを思わせます。2000年前の人もこれ見て、「似てる!」とか言いあってたんでしょうか。
「邪悪をにらみ返す目」として、護符の役割を果たしたアイビーズ。古代の交易品として世界中に広まった、とんぼ玉のご先祖様みたいなものです。
壁一面にガラス作品を飾った「WORLD LAMPWORK GLASS」は、阪神・淡路大震災後に、神戸再生の願いを込めて国内外の作家、約400人から寄贈されたもの。
それぞれの作品にメッセージが添えられていて、震災を機にミュージアムを開館した館長・宮本さんにとっても思い入れ深い展示です。
神戸ジャーナル 編集部
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