西区の実家で「両親がコロナ」に。母が「入院」父は「自宅療養」…「まさか」が起きた話を聞いてきた

神戸市西区の「実家の両親」がコロナになった。その時、どんな状況になるのか?話を聞きました。

神戸市西区の実家に住む60代の両親がコロナに感染したAさん。自分を含む3人の子どもは独立して家を出ているので、両親は2人暮らしでした。

4月中旬、まず母の感染が発覚し「中等症」だったため入院、家には父が独りの状況に。

普段フルタイムで働き体力に自信のある父は、当初「俺は大丈夫!」と言っていましたが2日後には発熱、「陽性」も確認されます。

当初37℃台の「軽症」で、「ホテル療養」を希望するものの保健所から「空きがない」といわれ「自宅療養」がスタート。

その後、着実に体調が悪化し38℃を超えます。


自宅療養支援セット(イメージ)

自宅療養者には、市から食料などの支援セットが用意されますが、症状が出てくると「お腹が減る感覚がなくなる」といい、水分だけしか口にできなくなったそう。

毎日1回は「看護師さん」が様子を見に来て心音確認や寝たきりで痛む背中をさすってくれたりするものの、薬などの処方はなし。滞在時間は10分ほどで、生活の手助けはありません。

症状はますます悪化し、とうとう肺に雑音がする「肺炎」の状態になってしまいました。

この間、Aさんたち家族は実家に足を踏み入れることはできず、「電話」での容態確認と玄関先までの「差し入れ」だけが父にできることでした。

感染を覚悟して実家に乗り込むこともできなくはありませんが、同じ頃、コロナで入院していた母が「重症」となり病院から「最後の面会になるかも」と呼び出されるような状態に。

実家に行き「濃厚接触者」になれば、病院へ立ち入ることができなくなるため、もどかしさを感じながらの判断でした。

「肺炎」をおこした自宅療養の父は、パルスオキシメーターの数値(血中酸素濃度)が下がり、いよいよロレツが回らず意思疎通も難しくなり、Aさんたちが「救急車」を呼びます。

救急隊員が来てくれるものの、コロナ患者の搬送先を調整する「保健所」は「空きがない」となり1~2時間で諦めて帰ってしまう…

救急隊員曰く「コロナじゃなければ救急搬送の対象」の容態。Aさんたちは3度救急車を呼びましたが、結局入院することはできませんでした。

ちょうど4月の末は市内に2000人以上のコロナ患者がいて、なおも右肩上がりに患者が増え続けているとき、「意識がある」という点で保健所の搬送の順位としては低く扱われたようです。

Aさんの父に、当時どんな状態だったのか聞きました。

「インフルエンザなどとは全然違う。普段は熱に強い方だが、体の自由がきかない。立ち歩きなどできない状態で、枕元においた電話に出るのも時間がかかってしまうんです。」

意識がとんだり、話しかけられてるけど何も考えられない、今までに経験したことがない感覚だったそう。

「仕事復帰や、元の日常生活に戻れるか不安な気持ちでいっぱいだった。しんどさを口で伝えることは非常に難しい、このコロナは自分でなってみないとわからんと思う」とも。

Aさんたちは「なんでもいいから医者に診せたい」と何度も保健所にかけあい、市の保健局にまで話をして、翌日ようやくコロナ対応の「外来病院」で診察が叶うことになります。

外来なので入院はできませんでしたが「点滴」や「ステロイド」などの錠剤を処方してもらい、少し状態が落ち着きます。薬の効果か、さらに数日後には平熱にまで回復しました。

神戸では自宅療養中や入院を待つ間に、亡くなってしまった人が何人もいます。もし病院へ行けなかったら、Aさんの父が最悪の事態になっていた可能性も否定できません。

その後「重症」だった母も状態がもち直し、Aさんたちはようやく胸をなでおろします。母の死を覚悟し、父を生かすために奔走した、怒涛の11日間でした。

Aさんの両親が患った頃に比べると、病床使用率63%と一時よりは下がってきましたが、「自宅療養者」と「入院調整中」は200人近くいる状態。6月9日時点

「インド株」など、新たな変異株でまた急激に増えることも考えられます。

自宅で症状が悪化した父は、職場復帰を果たしたものの「後遺症」が残っていて「喘息」の症状がでたり、急に「肺が痛む」ことがある状態。重症だった母は、リハビリのためまだ入院中です。

Aさんはテレビなどで見てはいたけど「まさか自分の両親が」「まさかそんなスピードで悪化するとは」…油断していた、と振り返ります。

自分がなるかも、そして家族がなるかも、まだまだ安心できる状況ではないので、その時を想像しておくことは大事かもしれません。

◆関連リンク
市内での発生状況 – 神戸市 公式サイト

 

この記事を書いた人

カオル

とりあえず「食パン」を買う人です。

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1 個のコメントコメントを残す
  • 神戸ごりら

    ライターのカオルさんありがとうございます。
    テレビなどのニュースでは、怖いなぁと思っているうちに話が終わってしまうので、じっくり自分のペースで噛み締めながら記事を読ませてもらいました。普段の新型コロナの予防に引き続き気を引き締めていきたいと思いました。

    2021年6月12日5:56 PM 返信する