
塩田武士さんによる最新長篇『踊りつかれて』が、「第173回 直木三十五賞」の候補作にノミネートされてます。
塩田さんは兵庫県の出身で、関西学院大学の卒業後、神戸新聞社に入社したという経歴を持つ社会派作家です。
作品のテーマは「週刊誌の罪 × SNSの罰」で、気になるあらすじはこんな感じ。
言葉が異次元の暴力になるこの時代。
不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷を受けた人気お笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。一方、バブル期の華やかなりし芸能界を駆け抜けた伝説の歌姫・奥田美月は写真週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。
彼らが目にした絶望、それは――。
今回のノミネートにあたって、塩田さんからは次のような直筆コメントとメッセージが発表されてますよ。

不確かでネガティブな情報が、私たちの生活に影響を与え過ぎています。ここ数年、ネット社会に息苦しさを覚えていた私は、日々胸の内に生じる違和感や苛立ち、疑問をメモし続けてきました。その中で芽生えたのは、質感のない世界で数多く発生している誹謗中傷によって、亡くなる人が増えるのではないかという危惧です。
今書くべき小説とは何か――構想と取材に時間をかけ、徹底的に「人」と「社会」を描きました。
『踊りつかれて』は作家人生の節目となるような大切な作品です。今回、本作が直木賞の候補になったことは大きな喜びです。読者の方々、創作にご協力いただいた皆様に心から感謝申し上げます。

現在 <序章 宣戦布告>の全文がWEBで公開されているので、読んでみたい人は試し読みページからどうぞ。
書誌情報
書名:『踊りつかれて』
著者:塩田武士
判型:四六判上製カバー装
定価:2,420円(税込)
発売日:2025年5月27日
ISBN:978-4-16-391980-5

著者プロフィール
1979年兵庫県生まれ。関西学院大学卒業後、神戸新聞社に入社。
2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、小説家デビュー。同作は第23回将棋ペンクラブ大賞文芸部門大賞も受賞した。
2012年に神戸新聞社を退社し、専業作家に。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第一位。
2019年『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2024年『存在のすべてを』で第9回渡辺淳一文学賞を受賞。
その他の著書に『崩壊』『雪の香り』『騙し絵の牙』『デルタの羊』『朱色の化身』などがある。
全国の書店員によれば「まるで鋭い凶器に何度も切りつけられるような感覚」「心の内は今も震えている」といった感想を抱く作品なんだとか。
第173回直木賞の選考会は、7月16日に都内で行われることになっています。
やよい
「推し」のライブによく出没します。
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