【神戸まち様式】70年代のアカデミックな街、神戸を知る大川透さん(4)

観光地としてではなく、「街」としての神戸の魅力を語るとき、ローカルシーンに息づく独自カルチャーの話題は欠かせない。似た嗜好を持つ人間が集い、コミュニティが形成され、そこから新しい文化が生まれていくような場所、店、そして中心人物。

そのつながりや神戸サブカルの奥深さを、取材をとおして紐解いてみたい。

そんな考えのもと、ディレクターT(神戸出身)、カメラマンY(愛知出身)、ライターS(四国出身)の3人で「アビョーン PLUS ONE」のマスター大川透さんを訪ねた。

大川透さん(66)
神戸生まれ、神戸育ち。「アビョーン PLUS ONE」マスターで「裸賊」ボーカル。

「アビョーン PLUS ONE」
神戸市中央区北長狭通3-1-4ツタニビル3F 17:00~25:00 火・水曜定休

ジャンルを問わずミュージシャン、アーティストが多く集い、人がまた人を呼んで交流が生まれる神戸のカルチャースポット的バー(看板には「居酒屋」とあるけど、気分はバー)。前身は、震災で職を失った大川さんが、1998年に立ち上げた「ONE PLUS ONE」と、アーティストの西村房子さんのお店「アビョーン」。

2つのお店の間でお客さんがかぶっていたことと「ONE PLUS ONE」の営業不振のため、じゃぁ一緒にやろうということで、2003年に「アビョーン PLUS ONE」として現在のスタイルになった。客層は20代から80代までと幅広い。西村さんの作るアテが人気。あと、野菜をたくさん使った定食が絶品!

 

取材でお邪魔した日の定食(1000円)。丁寧に手作りされてて、心の栄養にもなる。しかもごはん、おかわりできます。

アテは季節や日によって変わる。この日はこんな感じ。

 

 

おいしいところはたいてい「街中華」。いいえ、イタリアンもフレンチも、パンだって。

 

ー(S) これまでのお話で、神戸が70年代から音楽もアートも本もファッションも充実してた、していったことは理解したんですけど、食文化はどうだったんでしょう? 大阪といえばタコ焼き、みたいに「神戸といえば」のモノってありましたっけ。

中華のあんかけ焼きそば。大阪では食べられへん。

ー(西村さん)「長野屋」のカレーそば。高架下の。神戸のはちょっと違う。

たぷたぷで。いつまでも熱いん。片栗文化や。

ー(S) ということは、カレーがかかってるわけじゃなく?

ー(西村さん) そうそう、カレールーをかけるんじゃなくて、出汁にカレー粉が入ってて、あっさりしてる。あんかけやね。あんかけカレーそば。

街中華のカレーもおいしいのよ。

ー(S) 中華屋さんでカレーがあるんですか?

それはもう絶対、神戸では必須アイテム。

ー(T) そうですね。僕もあんかけの焼きそばや、汁そばが神戸っぽいと思う。醤油味の支那そばとは違う。透明の透き通った。

ー(西村さん) 鶏がらスープよね。

 

 

ー(T) いっとき牛バラの煮込みも有名になりましたね。中華の牛シチュー。八角がめちゃ効いてる。おかんの同級生に中国の人がいて、牛シチューや中華ちまきをくれたりしてたから、僕にとってはちっちゃいときの味です。ほかにもザーサイは南京町に買いに行ったり、餃子の皮を製麺所に買いに行ったり。お店も行くところが決まってて、広東系が多いから街中華もあっさりしている。逆に麻婆豆腐とかはなじみがない。

ー(西村さん) 神戸は街中華がおいしい。

ー(Y) そば飯は違うんですか? 新しめ?

いやいや、古い。昭和30年くらいから。長田が発祥と言われてるけど、長田からたぶん東灘くらいまでにそういうのがあったと思う。

 

 

ー(西村さん) ステーキでも、谷崎潤一郎がこのへんでステーキ食べてた。

「ハイウェー」ね。今は移転したけど。谷崎潤一郎が店の名付け親や。老舗はほとんど閉めていってもうて街が変わっていったけど、僕らでもちょっとお金持ってたらそういうところに行ったりして。

ー(西村さん) おいしいのは神戸はいっぱいある。洋食も。イタリアンやフレンチが最初にバーンと。

バルの裏っ側にあったんよ昔。結構安かった。ハンバーグとかスパゲティが鉄板で出てきて、卵乗してじゅうじゅういうてるような。結構安かったん。パンも「ドンク」があるよね。あそこのカツサンドとか高いけど、食えたら最高。

ー(T) そうですよね。おとんが木曜日は「ドンク」のフランスパン買って帰って来るから待ってましたよ。高級パンなんで。

ー(お客さん) あの、みそだれ・・。

ー(一同)おお~~。

餃子のみそだれ。確かにあれは衝撃的だった。「ひょうたん」派か、「赤萬」派か、あるのよね。

ー(T) 僕ん家は「赤萬」派でした。

ー(西村さん) そこの「王将」、みそだれ置くようになったんだよ。たぶんあそこだけやと思うわ。神戸スタイル。

ー(T) あ、御影の「王将」もね、ありますよ。御影の「王将」は「王将」のなかでも別格で、遠方からも人が来る。神戸の人はラーメンと餃子はこだわりあるんちゃうかな。

ー(Y) それは汁そばに対してでしょ? 普通のラーメンと汁そばは分けて話さないと大戦争が起きちゃう(笑)。

 

 

 

ー(T) 南京町はどうやったんですか?

南京町はあんなきれなかった。昔はほんまの市場。中国の野菜売ってたり、そこに豚まんの有名な店があったり。ビルじゃない、平家や。

ー(西村さん) 下はじたじたで、通路も狭かった。

ー(T) 南京町に川魚料理の店があって、ちっちゃいころ、そこに連れて行ってもらったら、もうガッツポーズ。うなぎとか鯉のあらいとか。確かに南京町自体がもうちょいごちゃっとカオスだった気がしますわ。今みたいにバリバリの観光地というより、おかんが普通に買い物行くとこみたいな記憶があります。

昔はおっぱい山のところも、つぼ焼き屋とか何十店と露店があった。マクドのあたりまで。冬場は寒いから、そこでいっぱいひっかけて帰るサラリーマンも多かった。自分の気に入った露店で待ち合わせとかするわけ。区画整理がまだできてない時代。神戸にも屋台あったん。有名な屋台のラーメン屋さんとかね。

ー(Y) カオスいいなぁ。時代が戻らないかな。

ー(西村さん) 今は絶対無理だよね。もし戻るとしても、キッチンカーじゃない?

 

 

神戸の食文化の話題は、居合わせたお客さんもまじえて盛り上がりました。次回は大川さんがお店を始めたきかっけや、神戸の街への思いをうかがいます。

 

 

※記事内容は取材当時のものです。

presented by SPEAKER STACK

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「神戸まち様式」とは
神戸のローカルカルチャーを取材で紐解き、発信する企画です。

 

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