神戸市立博物館で特別展『デ・キリコ展』が開催されるみたい。ムロツヨシさんが音声ガイドに初登場

神戸市立博物館で、20世紀美術に衝撃を与えた孤高の画家「ジョルジョ・デ・キリコ」の絵画・彫刻・舞台美術を展示する特別展が開催されます。

デ・キリコ展

2024年9月14日(土)~12月8日(日)
神戸市立博物館


神戸市中央区京町24

今回の特別展は、デ・キリコのおよそ70年にわたる画業を「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分け、初期から晩年までの絵画を余すところなく紹介。

さらに彼が手掛けた彫刻や舞台美術も展示する、日本ではかつてない規模の回顧展です。

ジョルジョ・デ・キリコとは

イタリア人の両親のもとギリシャで生を受けたジョルジョ・デ・キリコ(1888~1978)。

1910年頃から、簡潔明瞭な構成で広場や室内を描きながらも、ゆがんだ遠近法、一見すると脈絡のないモティーフの配置、幻想的な雰囲気によって、日常の奥に潜む非日常を表した絵画を描き始めます。後に「形而上(けいじじょう)絵画」と名付けた1910年代の作品は、サルバドール・ダリやルネ・マグリットといったシュルレアリスムの画家をはじめ、数多くの芸術家に衝撃を与えました。

1919年以降は伝統的な絵画技法に興味を抱くようになり、古典絵画の様式へと回帰していきます。それと同時に以前の形而上絵画の題材を取り上げた作品も頻繁に制作するなど、90歳で亡くなるまで創作を続けました。

第一章 自画像・肖像
デキリコが生涯にわたって取り組んできた自画像は、自らの画家としての立場を表明する重要な主題でした。
自画像の中で彼は、古風な出で立ちで自己を演出するばかりではなく、西洋絵画の伝統的なマチエールを意識した表現技法を披露しています。


17世紀の衣装をまとった公園での自画像(1959年、油彩・カンヴァス)
ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

第二章 形而上絵画
デ・キリコは1910年代にゆがんだ遠近法や脈絡のないモティーフの配置、幻想的な雰囲気によって日常の奥に潜む非日常や神秘、謎を表した革新的な絵画を描き始めます。ニーチェの哲学に影響を受けたその作品群に、後に自ら「形而上絵画」と名付けました。それらはシュルレアリストなど多くの芸術家に刺激をあたえたそうです。


形而上的なミューズたち(1918年、油彩・カンヴァス)
カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館(フランチェスコ・フェデリコ・チェッルーティ美術財団より長期貸与)
© Castello di Rivoli Museo d’Arte Contemporanea, Rivoli-Turin, long-term loan from Fondazione Cerruti
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

「形而上的なミューズたち」は、フェッラーラ期最後の代表作。狭い室内に置かれた2体のマヌカンは、以前に増して濃密かつ美しい色彩で描かれていますが、同時にモティーフの立体感を際立たせる明暗法には、後の古典回帰時代を予告しています。

顔のないマヌカンは不可解で異様な印象をあたえつつ、どこか記念碑的な威厳も備える作品です。

第三章 1920年代の展開
1920年代、デ・キリコは従来のマヌカンに加え、「室内風景と谷間の家具」「剣闘士」などの新たな主題にも取り組みます。
海や神殿、山々など、本来は外にあるはずのものが天井の低い部屋の中に。逆に屋内にあるべき家具が外に置かれており、ちぐはぐで不穏なイメージを作り上げています。


谷間の家具(1927年、油彩・カンヴァス)
トレント・エ・ロヴェレート近現代美術館(L.F.コレクションより長期貸与)
© Archivio Fotografico e Mediateca Mart
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

第四章 伝統的な絵画への回帰:「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ
1920年ごろから、ティツィアーノやラファエロ、デューラーといったルネサンス期の作品に、次いで1940年代にルーヴェンスやヴァトーなどに加えて、19世紀フランスの新古典主義などの作品に傾倒し、伝統的絵画表現へと回帰していったデ・キリコ。過去の巨匠たちの傑作を研究し、これらを強く意識した作品を描くようになります。


風景の中で水浴する女たちと赤い布(1945年、油彩・カンヴァス)
ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

「風景の中で水浴する女たちと赤い布」は、後に妻となるイーザをモデルとする水浴画です。

手前の果物の描写や奥の木々の描き方などを見ると17世紀のバロック絵画、そしてアングル、ドラクロワ、クールベといった19世紀フランス絵画を連想させる表現も見られます。

第五章 新形而上絵画
1978年に亡くなるまでの10年余りの時期にデ・キリコは、あらためて形而上絵画に取り組みます。
それらは「新形而上絵画」と呼ばれ、若い頃に描いた広場やマヌカン、室内風景などに新しい要素を画面上で融合し、過去の作品を再解釈した新しい境地に到達します。


オデュッセウスの帰還(1968年、油彩・カンヴァス)
ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

「オデュッセウスの帰還」は、長く苦難に満ちた旅路の果てに帰郷したギリシャ神話の英雄オデュッセウスが、ボートを漕ぐ姿が描かれたものです。

舞台は現代風の室内で、右の窓の外には故郷ギリシャの風景が見え、左の壁には「イタリア広場」を描いた作品がかけられていることから、ここはデ・キリコ自身の居室と解釈できます。

室内の椅子や洋服ダンスなどもデ・キリコが過去に描いたモティーフ。画家は、英雄の旅路を、自身の長く険しい人生と重ね合わせています。

役者のムロツヨシさんが音声ガイドに初登場

音声ガイドのナビゲーターを務めるのは今回が初めてというムロさん。「ひとりの表現者として、何ができるか。皆さまとデ・キリコの作品との出会いに、お供させて頂けたら嬉しい限りです、宜しくお願い致します。ムロツヨシです。」と語ったそうです。

「形而上絵画」とはなにか?不思議な世界をわかりやすく解説してくれます。

ムロツヨシ/役者
1976年1月23日生まれ、神奈川県出身。
大学在学中に役者を志し、99年に作・演出・出演を行った独り舞台で活動を開始。
映画「サマータイムマシン・ブルース」をきっかけに映像にも活動を広げる。現在、映画、ドラマ、舞台とジャンルを問わず活躍中。

世界的ピアニスト辻井信行さんと楽曲タイアップ


@Yuji Hori

世界的ピアニスト、辻井伸行さんが演奏するクロード・ドビュッシー作曲の『喜びの島』がデ・キリコ展のテーマ曲に。

「デ・キリコと一緒に仕事をされたことがあるというドビュッシーは、自分も大好きな作曲家の1人です。『喜びの島』は愛のうたでもあり、美術にもゆかりの深い楽曲なので、デ・キリコの作品を観ながら、みなさまに聞いていただけるとうれしいです。」と話したそうです。

辻井伸行(ピアノ) Nobuyuki Tsujii, piano(「辻」は一点しんにょう)
2009年6月「第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール」において日本人として初優勝を飾る。
以来、世界的なピアニストのひとりとして活躍し、ニューヨークのカーネギーホールの主催公演やイギリス最大の音楽祭「プロムス」などに出演し大成功を収めたほか、ウィーン楽友協会やベルリン・フィルハーモニー、パリのシャンゼリゼ劇場などの世界の著名なホールで例年コンサートを開催し、高い評価と多くの聴衆の支持を得ている。
また、欧米の一流オーケストラからソリストとしての出演希望を数多く寄せられ、ゲルギエフやアシュケナージなどの世界的指揮者からも高い評価を受け、これまでに数多くの共演を行っている。

期間
2024年9月14日(土)~12月8日(日)

場所
神戸市立博物館

開館時間
9:30~17:30
※金・土曜日は20:00まで
※展示室への入場は閉館の30分前まで

休館日
月曜日、9月17日(火)・24日(火)・10月15日(火)・11月5日(火)
※ただし9月16日(月)・23日(月)・10月14日(月)・11月4日(月)は開館

価格
【当日券】一般:2,000円/大学生:1,000円/高校生以下:無料
【前売・団体券】一般:1,800円/大学生:900円/高校生以下:無料
※神戸市在住で満65歳以上の方は当日一般料金の半額。(確認できるものをご持参ください)
※団体は20名以上
※障害のある方は障害者手帳等の提示で無料。(確認できるものをご持参ください)
※前売9月限定券(一般のみ)1,500円、前売ペア券3,400円など、お得なチケットなど最新情報は公式HPをご確認ください。

前売券
【期間】2024年9月13日(金)23:59まで
【販売場所】公式サイトのプレイガイドより

問い合わせ
TEL:078-391-0035

東京と神戸のみ開催される展示会みたいですよ。日本ではかつてない規模の回顧展とのことなので、興味のある人はぜひ。

ちなみに、神戸市立博物館では、『デ・キリコ展』の前の特別展として「テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本」が開催されてます。

神戸市立博物館で特別展『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』が開催されるみたい。漫画「テルマエ・ロマエ」解説パネルも

2024年5月26日

◆関連リンク
『デ・キリコ展』 – 公式サイト

 

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1 個のコメントコメントを残す
  • 灘区民

    マティス展は東京だけでしたので、去年と今年に日帰りで観てきました。
    デ キリコ展は、神戸に巡回して来ますので、ゆっくり鑑賞できます。
    ウィリアム アドルフ ブグローの絵も好きなので、いつか神戸で観ることができれば嬉しいです。

    2024年6月28日6:52 PM 返信する