【関西国際大学 連携プログラム】学生による記事配信です。
【取材/記事執筆】
関西国際大学 社会学部 川嶋こころ
(ソーシャルメディア論/担当教員:社会学部社会学科 准教授 永井 純一)
今年で20回目を迎え、5月19日にメリケンパークで行われたチャリティー音楽フェス「COMING KOBE24」。
音楽と被災地復興支援が融合し、復興を遂げた神戸からその力強さとの全国へのありがとうを届ける最強に温かいフェスです。私は2016年の熊本地震で被災しました。神戸の大学に進学し初めてのボランティアとして昨年、COMING KOBEの募金ボランティアに参加しました。
阪神淡路大震災を語り継ぎ、被災地復興支援のために入場料無料で募金活動をするというこのイベントの趣旨をボランティア説明会で伺い、その想いを理解した上で参加しました。印象的だったのは会場や人の熱量がとても高かったことです。昨年、初日のトリを飾ったガガガSPのステージでメリケンパークの端から端まで一体感に包まれる景色に感動しました。
今回は、私が昨年参加した募金ボランティアの思い出を振り返りつつ、三宮にあるライブハウス「music zoo Kobe 太陽と虎」にお邪魔して、COMING KOBE実行委員長の上田佑吏さんにインタビューしました。
―今年は雨の中の開催になりましたが振り返ってみてどうでしたか?
前日にステージにテントを立てたり、雨の養生したりしてやっぱり大変でした。でも中止になるような土砂降りにはならなかったので良かったです。メリケンパークは海も見えてロケーションもいいので晴れたらさらに良かったですね。
―今回すごい数のアーティストが出演していたと思うのですが、どうやってお声がけしていますか?
普段太陽と虎でライブしてくださったときにアーティストさんに直接会ってお声がけさせていただくことが多いです。チャリティーという趣旨があるイベントなので、その趣旨に賛同してくれているアーティストさんから「COMING KOBEに出たい」と言っていただけたりもして、ありがたいです。
熱い気持ちがある方にはこちらからもぜひ出演お願いします、という形でお話させていただいています。いろんな方が出たいと言ってくださるので、多すぎて毎年ブッキングが難しいです。
チャリティーイベントなので、ギャラをお渡しできていないのですが、イベントの意味を理解してくださっているので熱い思いを持って出演していただいています。
―昨年募金ボランティアをして、お客さんもたくさん募金していて皆さん熱いと感じました。
そうですね。入場料が無料というのは、その分を募金につなげてほしいという思いがあります。毎年何百万という募金が集まるのは、ありがたいことですね。お客さんもイベントの意味を理解してもらっていると思います。
―入場料無料ということですが、赤字にはならないんですか?
正直なところ、ですよね(笑)正直、赤字は赤字ですね。実際やってみないとお客さんが何人来るのかわからないというところがあって、一か八かのリスクを抱えて開催しているという感じです。チケット代は無料なのですが、COMING KOBEのグッズや、オフィシャルドリンクの売り上げを運営費に回していて、当日お客さんがどれくらい来てくれるかによって変動します。
あとは、イベントの趣旨を理解してくださっている神戸の企業さんなどに協賛企業になっていただいてご協力いただています。
―今回集まった募金というのはどう使う予定ですか?
集まった募金は実行委員のお金ではないので、みんなで話し合って決めようというので6月30日に太陽と虎で「COMING KOBE24 募金先を考える会」を開催してお客さんと一緒に考えました。実際にお客さんから、今年は1月1日の能登半島の地震と、4月3日の台湾での地震の復興支援に募金を使うというご意見をいただきました。
使い道としては、僕たちは子どもたちの支援にも力を入れています。東日本大震災の時のそうだったんですが、子どもたちの遊び場や、学ぶ機会がなくなってしまうんですよね。なので、東日本大震災の時も、図書館に本を寄付したり、勉強道具や遊具を寄付したりしました。
能登は復興中で、災害支援団体を支援して寄付しようと思います。団体の方たちもボランティアで活動していて、なかなか国が動いてくれないというところもあるみたいで。活動するにもお金が無限にあるわけではないので、微力ですがそういったところにCOMING KOBEとして寄付ができればなと考えています。
今の能登の復興のフェーズでは、第一次救援物資というよりも、コーヒーが飲みたいとか、娯楽的なものも、そういう要望も今だから必要だと思います。
―お父様の松原さんから引き継いでどういった想いで活動していますか。
自分は、震災を経験したことないので、つなげていくというのが一番ですね。記憶から忘れ去られないというか、風化させないことが大事やなと思います。地震だけじゃなくても災害って絶対いつか起こるものだと思うんです。
被災地で起きたノウハウ、防災・減災の意識を皆さんに持っていただかないといけないと思うので、伝えていくっていうのを念頭に、イベントをやっていますね。プラスアルファ音楽で楽しみながらっていうのはもちろんですけど、それだけじゃなく父が伝えたかったことだと思うので、それを信念に持っています。
―神戸は震災の記憶が濃く残っていると思います。
僕は正直防災のイベントって堅苦しくて興味ないんです。街中での募金活動にチャリティーするのってある意味勇気がいることやと思うし、それは恥ずかしがることでもないと思うんですけど、でもその支援がなければ地震で亡くなってしまう人もいるわけで、少なくともみんなに生きていてほしいと思っていて、結果的に結びつくところやと思います。
音楽を通して、ライブに行って、防災とかに興味ないっていう人にも、ちょっと頭の中にその意識を持って帰ってもらえたら、僕らとしてはありがたいなと思います。被災地だからこそ守れる命があるのなら伝えていきたいです。
―今後COMING KOBEを続けていくうえでの展望はありますか。
神戸市さんと協力させてもらいながらやっていますが、今後はもっと神戸の街を巻き込んだイベントにしていきたいですね。規模感を大きくして、極端な話かもしれないですけど「COMING KOBEの日は三宮全体あちこちで音楽が鳴っている」みたいなイベントにしていきたいなと考えています。
多くの方に来ていただければ意味あることだと思うので、それをどんどん大きくしていけるように活動していきたいです。でも根底には、続けていくことが目標ですね。毎年ひやひやしながらやってますけど、こけないように、赤字が続いてでも開催できるような形で継続させていきたいです。
―話が少し変わってしまうのですが、「神戸と言えばジャズ」、というイメージがあるのですが、神戸とロックの親和性というのは何かあるのでしょうか。
神戸出身のバンドって結構多くて、こういうライブハウスっていうのが根底を作っているのかなと思いますね。
バンドの人口が少なければそもそもその上にロックって根付かないと思うので。ライブハウスを運営しているプレイヤーの人たちが音楽に対しての意識が熱いからこそ周りを巻き込む力があるっていうのはあるのかなと思いますね。僕はそれすごく思います。神戸ならではかもしれないですね。
―大学で先生に太陽と虎に取材に行くということをお話したら、行ったことはないが、知ってる、存在感があるという風におっしゃっていました。
存在感っていうのは意識していますね。場所でも人でも、アピールすることって大切やと思いますね。みんなが太陽と虎知っているってなったら、必然的に神戸=ロックの街にまでなったら面白いですね。神戸だからこそできることなのかもしれないですね。
―最後にこの記事を読んでくれている方や、COMING KOBEに行ってみたいと思っている方にメッセージをお願いします。
神戸という街は魅力的な街で、被災地特有の人情味あふれる人が素敵なところです。神戸の結束力、力強さは、震災からここまで復興してきたという力があるので、それは魅力の一つだと思います。
COMING KOBEもそうですが、音楽だけじゃなくてグルメやアートなどの文化が発信できるユニークな街になっていってほしいなと思っています。COMING KOBEに来ていただければ、僕たちの街がより深く理解できると思うので、ぜひ遊びに来てください!
私は今回このインタビューを通して、上田さんや太陽と虎だからできる人情味あふれる人と人とのつながりや信頼があるCOMING KOBEは、神戸だからこそ実現しているフェスだと感じました。
私自身熊本で被災したからこそ、起きてしまった悲しい出来事を少しでも少なくするために被災地だから伝えられるノウハウや、経験を語り継ぐことは、とても重要なことだと思います。
阪神淡路大震災からもうすぐ30年。
震災当時の助け合いや、ここまで復興した神戸の街、これまで応援してくれた土地での被災地復興支援を音楽フェスを通して新たな形で伝えることができるCOMING KOBEは、「被災した父から、被災していない息子へ。」
「復興した神戸から、お客さんの募金によって、被災地支援に。」
震災を知らない世代にも音楽を通して経験を語り継いで、人と人が世代や場所をつないでいることが実感できると思います。
募金ボランティアとして参加して強く思ったのは、ステージだけでなく、スタッフの方の熱量、募金してくれるお客さんの“音楽愛”や“カミコベ愛”によって成り立っているということです。
印象的だったのは、多くの方が松原さんの事を思い出し懐かしむ様子でした。松原さんの看板を見てみんながニコニコしていて、第一回のTシャツを着てきている人や、1年かけて松原さんの形の貯金箱いっぱいに募金を貯めて持ってきてくださる方、リストバンドを買ったお釣りを募金箱に入れていく方。とってもかっこよかったです。
人の力、音楽の力で、神戸の悲しい記憶でもある阪神淡路大震災を忘れず、人と人のつながりの温かさを持った素敵なイベントです。今回、取材の依頼を快く受けてくださった上田さんありがとうございました。
ぜひ皆さんもCOMING KOBEを体感してみてください!
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