「神戸ってどこがお洒落なの?観光名所ってある?」三宮を歩いていて、観光客のこんな会話を偶然にも聞いてしまったら、心穏やかではいられないのが神戸っ子ではないでしょうか。なぜならみんな、神戸の街が大好きだから。
私もそんな一人です。”お洒落な街”と認知されている自負もあってか、よそで「神戸から来ました!」と挨拶する瞬間は、少し誇らしい気持ちになるのも、”神戸っ子あるある”だと思います。
では、神戸を色と柄で表現している「神戸タータン」をご存知ですか。神戸開港150年を記念して作られた、見る人に直感的に「神戸の街」を感じさせるチェック柄です。
基調となるのは神戸港の深みのある「青」、ポートタワーや神戸大橋の「赤」、六甲山の「緑」、真珠や街の洋風建築の「白」、それにグレーを加えた5色が「神戸タータン」の配色です。
そのデザインを手がけた生みの親でもある「神戸タータン協議会」会長の石田原 弘さんに、「神戸タータン」への想いと取り組み、そしてこれからの神戸の街について伺いました。
【取材】 うえのゆうこ
神戸市在住の取材・インタビューライター
神戸のタウン情報誌取材記者。好奇心旺盛、心のままに自分の視点で言葉を紡ぎます。趣味のソフトバレーボールのポジションはアタッカー。最近キックボクシングジムに通い始め「強くなりたい」と密かに思う。
テーラーの店主でもあり大学講師、地方都市の再生アドバイザーなど多方面でご活躍
──「神戸タータン」はどうやって誕生したのでしょうか。
タータン:タータンの本場、英国の「スコットランド・タータン登記所」という政府の機関に、名前とともにその柄が正式に登録されているもの。その点で普通のチェック柄とは圧倒的に違うと言える
「最初は神戸市から神戸開港150年の記念イベントのご相談があったのですが、一日で終わるイベントではなく、せっかくなら後にも残るものを作りたいと思いました。実はその少し前から個人的に「神戸のタータン」を作りたくて動いていたので、そのタイミングでのお話に『神戸市のタータンを作りませんか』とご提案したのが始まりです。
タータンは、スコットランドで地域や氏族(同じ祖先を持つファミリー)ごとの固有の柄として古くから確立しています。私はそんな英国生まれのタータンが、コンパクトでイメージを凝縮しやすい、神戸の街にこそ似合うアイテムだとずっと思っていました」
──そう思われる感性は、お若い頃にイギリスやフランス、イタリアで生活された影響もありそうですね。では「神戸タータン」には、神戸の街でどんな役割があると思われますか。
「神戸の人ってみなさん神戸が好きですよね。でもどこが好きかと尋ねると、ハッキリ言えない人も多いと思うんです。県外の人もお洒落なイメージを持たれていると思いますが、何があるかと言えば、海と山と旧居留地のお洒落な街並み、のような“雰囲気”なんですよね。それは先人たちが作ってくれたもので、これからは我々がそれを作っていかないといけない」
──神戸の街が好きなら、一人ひとりが「神戸の雰囲気を守っていきたい」と思う気持ちも大事ということでしょうか。
「そのためにも、神戸タータンが、神戸の人々の“ソフトパワーの拠りどころ”や“自信”、“誇り”になればいいな、という思いがあります。
例えば遠いパリの地で神戸タータンのチーフをさした人を見かけた時に『神戸の方ですか?』って声を掛けることができるとか、長い出張から戻った駅でタータンを見て、『あぁ神戸に帰ってきたな』とホッとする。そんな愛着を感じる存在ですね」
──実は私、ゴスペルの先生が帰国するお餞別に、神戸タータンのラペルピン(スーツの襟につけるピンバッジ)をみんなで贈ったのですが、グループLINEに投稿された可愛い蝶ネクタイ型のピンを見たときに、「なんて洒落ているんだ」と同時に、固有のタータンを持つ神戸を少し誇らしく思ったことを、思い出したんです。
お餞別に贈った「チビタイ」2,750円 (神戸タータンオンラインショップより)
「それはありがとうございます。神戸タータン協議会にはいろんな業界から140社を超える加盟をいただいて、今では商品数も350を超えています。お餞別や手土産にタータングッズを贈って、そこでタータンの会話をしてもらう、そうやって神戸の人にこそ使ってほしいと思っているんです」
──離れても、それを見るとふと神戸を思い出す。それは「神戸タータン」の持つ魅力のひとつですね!先生がアメリカで私たちや神戸のことを思い出してくれたら嬉しいです。
ところで石田原さんはテーラーでありながら神戸松蔭女子学院大学で専任講師もされていますが、どんな授業をされているのでしょうか。2021年には「神戸松蔭タータン」も誕生したそうですね。
「ファッション・ハウジングデザイン学科で、『地域貢献デザイン演習』などを教えています。いま大学は地域に密着・貢献することが求められていて、まさに神戸タータンでやっているような地域の課題に取り組む「街おこし」ですね。学生たちは神戸タータンを使ったファッションショーのイベントや、グッズを購入できるところをまとめた「買い回りマップ」などを毎年作成しています。そして去年、「神戸松蔭タータン」を授業の中で学生と一緒に作りました」
「スコットランド・タータン登記所」の認定証と「神戸松蔭タータン」
今年創立130年を迎える同大学は、これから様々な場面やアイテムに「神戸松蔭タータン」を活用されるそうです。可愛さの中に爽やかさもある、とても素敵なタータンですね。
神戸阪急での「神戸タータンファッションショー」の様子
学生さんたちが実際にお店に足を運んで作成した「神戸タータン買い回りマップ」。
https://www.kobetartan.jp/kaimawari/
他にも三宮センター街の3階デッキ「三Fストリート」には、神戸タータングッズの定番アイテムが購入できる自販機も登場しています。こちらもぜひチェックしてみてください。
神戸芸術工科大学の学生さんがこのエリア全体をプロデュース。自販機は「人と木のぬくもり」に溶けこむデザインとのこと。こちらも大学生による地域貢献ですね!
──最後に、これからの「神戸タータン」についてはどうお考えですか。
「神戸の市立中学校の標準服となるデザインの一部に神戸タータンが使われることも決まりました。市内の新小学一年生に、タータン柄の下敷きとクリアファイルをプレゼントしたり、神戸マラソンのゴールテープやメダルのリボンにも毎年採用されています。これからもっと若い人たちにも浸透していって、愛着を持ってもらいたいですね」
取材を終えて──
3月はネクタイのお問合せが多いですと石田原さんが話されていました。異動の季節、きっとお餞別にとお考えだと思います。
3月の神戸で、贈る人も誇らしく、受け取った人は遠い地で神戸を想う。私も経験した素敵なやりとりがたくさんあると想像しました。そして今回、「神戸タータン」のお話を伺って、あらためて神戸の街を愛おしく大事にしたい、自分の想いにも気がつきました。
これからは、「神戸から来ました!」にプラスで、タータングッズを身につけて「神戸タータンって言うんですよ。5色で神戸の街を表現していて…」って話してみようかな。
マイファースト「神戸タータン」
それから、少し未来の神戸の街へ想いを馳せてみました──。
何十年か先、神戸の人たちにとって「神戸タータン」が当たり前にそこにあって、考えるまでもないくらい神戸の街と人に馴染んでいたらいいな。
海と山があって、居留地があってハーバーランドがある。こじんまりしていて、街を表す「神戸タータン」があって・・・やっぱり神戸は「なぜか魅力的なお洒落な街」なのです。これからも大好きな神戸がずっとそうありますように。
神戸タータン協議会
住所 神戸市東灘区向洋町中6-9 神戸ファッションマート1F 石田洋服店内
TEL 078-854-9701
定休日 水曜日
公式サイト https://www.kobetartan.jp/
神戸公式観光サイト Feel KOBE
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娘が就職して神戸に住み始めたのでこの連休、田舎から生まれ始めて神戸の街へ。テレビでしか観た事がない三宮で買い物や食事をして…神戸は何だかとってもキレイな街。引っ越して来たいぐらい(笑)。いつか娘が神戸タータンのワンピースを着て帰省するのを楽しみに…どうぞ『神戸の街さん』娘を宜しくお願い致します。