神戸の“コーヒー・ストリート” 栄町の個性派ショップ  Feel KOBE

 元町通の南側、かつては港湾・貿易関係の会社が集まり、港町の活気を体現していた栄町。今もレトロなビルが数多く立ち並び、当時の残り香を伝える界隈が、大きく変わったのは2000年代に入ってから。点在するビルの中に小さな雑貨店が集う、おしゃれな“雑貨の街”として様変わりしました。

 そして2010年代、さらなる変化をもたらしたのが、コーヒーショップの急増。ロースターやカフェ、スタンドなど、多彩な店が個性を競い、いまや“コーヒーストリート”の趣に。開港以来、コーヒーと縁の深い神戸で、地元に根差して新たなコーヒーの魅力を発信する店へご案内します。

“コーヒー・ストリート”のパイオニア「VOICE of COFFEE」

元理容室の後を改装した店内。コンクリートと木材の質感を生かしたスタイリッシュなデザインは海外からも注目

 全国的に“コーヒー専門”を打ち出すカフェや、特に個人経営の小規模のロースターが増え始めたのは2010年ごろ。神戸で、この流れが顕著に表れたのが栄町です。当時、この辺りにオープンした店は、界隈にすっかり定着し、日常に欠かせない存在になっています。

 中でも、自家焙煎のコーヒーショップとして、いち早く栄町にオープンしたのが「VOICE of COFFEE」。「場所は栄町か元町周辺と決めていましたが、当時はコーヒー豆の販売をメインにする店は珍しかったですね」と振り返る店主の坂田恵司さんは、会社員から転身し、2013年に栄町4丁目で開店。2017年に一つ東の3丁目へ移転リニューアルした、界隈のコーヒーショップのパイオニアです。

 坂田さんが開店に至るきっかけとなったのは、会社員時代に初めて体験した、高品質でユニークな風味を持つスペシャルティコーヒー。まだ、その名称も一般に広まっていない頃、「それまでにない、突き抜けたおいしさ」に受けた衝撃の理由を探求するべく、東京の専門店で数々のセミナーに通い、ついには自分の店を持つまでに。店名には、素晴らしい珈琲の香味=“VOICE of COFFEE ”を、多くの人に届けたいとの思いが込められています。

コーヒー豆はブレンド100g700円~、シングルオリジン100g750円~

神戸の風景を描いた限定パッケージのコーヒーバッグはお土産にも好評

 ただ、「焙煎は方々で教わったものの、人それぞれで持論が全く違って。これだけは自分で感覚をつかむしかないと感じて」と、開店時に焙煎機を設置してから試行錯誤。しかも、「同じ機械を使っていても、日々の天気や風、湿度などで毎日変わる。安定して味を作るのは難しい」と、今もコーヒー豆の個性をいかに表現するかに腐心しています。

 カウンターにずらりと並ぶ豆は、すべてスペシャルティコーヒーのシングルオリジン(単一銘柄)が約8~10種に、定番のブレンドが3種。近年はコーヒーの個性的な酸味を生かす浅煎りが主流だが、「極端な浅煎り、深煎りはなく、飲みやすさを重視しています」と坂田さん。関西の嗜好なのか、中深~深煎りが好まれる。

 一方でユニークなのは、時季ごとに配合が変わるオリジナルブレンド。「うちの場合はシングルオリジンありきのブレンド。豆は少量ずつ仕入れ、3カ月ほどで入れ替わっていくので都度、組み合わせが変わるんです。味を変えずに、使う銘柄を変えるので同じ味を作るのが難しいんですが、配合は無限にあるので理想を求めていきたい」。逆に言えば、常に新鮮な豆の風味が楽しめるということ。3種のブレンドの味わいの表現を、飲み比べてみるのも一興です。

テイクアウトのドリップコーヒー450円。豆を購入すると220円の試飲価格に

 また、試飲も兼ねて、ハンドドリップのコーヒーをテイクアウトで提供。お好みの銘柄を選べるので、豆選びに悩んだら、実際に飲んでみるのがおすすめです。元理容室をリノベートした店内には、試飲スペースを併設。コンクリート打ちっ放しのクールなデザインは、海外メディアでも多数取り上げられ、外国人の観光客が訪れることもしばしば。街歩きの途中の息抜きに、多彩なコーヒーのみならずアーティスティックな空間も、ぜひ味わいたい魅力の一つです。

焙煎機は、火が直に生豆にあたる直火式5㎏を使用。空間にアクセントを加える壁の黒い正方形は、銀塗装が酸化変色したもの

環境循環型社会への取り組みとして、使用後は不要なゴミとなってしまう珈琲豆の袋を減らす目的で繰り返し使用でき、豆の保存用キャニスターとしても使えるリユースパッケージを提案、利用者が増えている。密閉構造で長期保存が可能

information

VOICE of COFFEE
住所:神戸市中央区栄町通3-1-17-1F
電話番号:078-954-6226
営業時間:11:00〜19:00
定休日:水曜

 

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