洋食文化の歴史と、神戸の洋食屋さん  Feel KOBE

開港とともに、異国からやってきたさまざまな文化が根づいた神戸。

その一つに「洋食文化」があります。神戸には代々続いている洋食屋さんも多く、なかには阪神大水害、神戸大空襲、阪神・淡路大震災を乗り越え、今もなお続くお店も。

今回は、そんな神戸の洋食の歴史と、おすすめの洋食屋さんを紹介します。

開港とともに根づいた神戸の洋食文化

1868年の開港をきっかけに、神戸では外国人向けホテルで西洋料理の提供が始まりました。

中でも1870(明治3)年に居留地にオープンした旧オリエンタルホテルの洋食は、国内だけでなく、海外からの評判も高かったことで有名。

当時、料理を手がけていたルイ・べギュー氏は、日本初の本格ホテルである「築地ホテル館」や、「横浜グランドホテル」の初代料理長を務めた実力をもち、彼から料理を学んだ日本人コックたちにも、その腕が受け継がれていったといいます。

新開地にある「グリル一平」の頭付きエビフライ

こうしてホテル出身のシェフや、外航船のコックが始めた店が増え、日本人の食の好みに合わせた洋食が神戸へ広がるように。

そのほか、店を訪れた外国人から「こんな料理があるよ」と教えてもらったりと、さまざまな要素を取り入れて、神戸の洋食は独自の進化を遂げてきました。

神戸には今でも何代も続く老舗洋食店が多く残っており、昔ながらの味が楽しめる名店がたくさんあります。そんな洋食の街でもある神戸で、おいしい洋食を求めて街歩きを楽しんでみるのもおすすめです。

グリル十字屋

「グリル十字屋」は、各線三宮駅から徒歩7分ほどのところにある洋食店。初代オーナーは長崎県の雲仙にある外国人保養地のホテルでオランダ人シェフに師事し、その後東京のパティスリー、製菓工場の工場長を経て、1933(昭和8)年に神戸で洋食屋を開きました。

初代オーナーの妻で、現オーナーの祖母はアメリカで育ったこともあり、数カ国の外国語が堪能だったそう。

そのため「外国語が通じる店」として外国人からも人気が高く、当時のお客さんの9割は外国人だったのだとか。

創業当初は神戸国際会館の前にある十字路あたりに店を構えていたのが店名の由来

しかし、お店をオープンした5年後の1938(昭和13)年には神戸大水害が、1942(昭和17)年には神戸大空襲、1995(平成7)年には阪神・淡路大震災など何度も災禍が訪れました。

「それでも『なんとかなる』という気持ちで、先代たちもやってきたんだと思います」と語るオーナーの話からは、神戸の街の人たちの力強さを感じます。

半地下になっている店内は天井が高く、広々とした空間。落ち着いたBGMが流れており、なんだか時間もゆっくり流れているよう。

店内には1973年ごろ、前の店舗時代に使用されていたテーブルやイスもあり、震災のときに割れなかったという照明も健在です。

人気メニューの「ビーフカツレツ」

「グリル十字屋」を訪れたら、ぜひ食べてみてほしいのがデミグラスソースを使った料理。3日間かけて仕込む手作りのソースは開店当時からレシピを変えず、代々受け継がれてきた味です。

ぎゅっと旨味が詰まったソースと、サクッと香ばしいビーフカツレツとの相性は抜群。ご飯がもりもり進むお店自慢のビーフカツレツを、じっくりと味わってみてください。

Information

グリル十字屋

住所 神戸市中央区江戸町96
アクセス 各線三宮駅より徒歩約8分
電話番号 ︎078-331-5455
営業時間 11:00~20:00(LO.19:30)
定休日 日曜日
公式サイト http://www.grill-jujiya.com/

伊藤グリル

つづいて紹介する「伊藤グリル」は、JR・阪神「元町駅」より徒歩3分、南京町広場から徒歩すぐのところにあります。

開業は大正12年、2023年には開業100年を迎えるという老舗洋食店。初代オーナーはもともと関東出身で、ヨーロッパで船上コックとして働いていましたが、縁あって神戸の街へ。テーブル3つで店を開いたのが始まりです。

カウンター席からはシェフの調理風景が眺められる

4代目の現オーナーシェフは、東京で料理修行をした後、1981年ポートピアホテルの開業スタッフとして入社。23歳からは数年間フランスで修行し、神戸へと戻ってきました。

伊藤グリルの店内は、レトロな雰囲気が漂う落ち着いた空間。明るい陽光が差し込む窓の外には、南京町を歩く人たちの姿が見えます。観光スポットがすぐ近くという立地のよさも、おすすめポイントの一つです。

そんな「伊藤グリル」で人気のメニューは、ビーフシチューです。初代オーナーからの味を受け継ぎつつ、いまの人の舌に合わせて伊藤さんが独自のアレンジを加えているのが特徴。

柔らかいお肉に、濃厚ですが重すぎないソースを絡めて食べると、そのおいしさに思わず頬が緩みます。

また、もう一つの看板メニュー「炭焼きステーキ」は、厳選した牛肉をシェフが目の前で焼き上げてくれるこだわりのひと品。昔ながらの洋食を食べたいと思ったら、ぜひ「伊藤グリル」へ足を運んでみてください。

Information

伊藤グリル

住所 神戸市中央区元町通1-6-6
アクセス JR・阪神「元町駅」より徒歩3分、阪急「三宮駅」より徒歩10分
電話番号 ︎078-331-2818
営業時間 ランチ11:30〜14:30、ディナー [通常]17:30〜22:00 [現在]17:30〜(LO.19:00、アラカルトLO.19:30)※ディナーは予約制
定休日 火・水曜日
公式サイト https://www.itogrill.com/

【取材・文】中田優里奈
神戸在住のライター。関西の観光、グルメを中心に企画・取材・編集を担当。企業インタビューや舞台撮影も手掛けている。これまで取材した神戸の観光スポットやホテル、店舗は200カ所以上。地元の魅力を発信したいという思いのもと、日頃から神戸の街歩きをしてネタ探しをしている。

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  • 匿名さん

    明治3年 = 西暦1870年 

    2022年11月19日10:17 AM 返信する