動物虐待防止を目的とする『どうぶつ弁護団』っていう団体ができてる。「神戸市獣医師会会長」インタビュー

2022年に兵庫県伊丹市に『NPO法人 どうぶつ弁護団』という団体が設立されています。

年々増えている動物を保護したり・里親探しをするボランティア団体とは異なり、法的知識や獣医学的知識を活かして「虐待をする飼い主や生体販売をする事業者」に対して捜査・処分がなされるための活動を行うために専門家で構成された団体です。

『どうぶつ弁護団』が主に行う活動は以下の通り。

  • 動物の虐待(動物の殺傷、遺棄を含む)が発生した場合に、弁護士や獣医師と連携し、当法人が主体となって告発等の手続を行い、適切に捜査・処分がなされるための活動を行います。
  • 動物関係法令、制度に対し提言を行います。
  • 動物の虐待を予防し、動物愛護への理解を深めるための普及啓発活動を行います。

その構成メンバーの一員として、兵庫区にある「中島動物病院」の院長を務める中島克元氏(神戸市獣医師会会長)も活動に加わっています。

獣医師としての目線で感じる「動物虐待の実態」や「活動における想い」などがインタビューとして公開されています。

団体理事として活動に加わることになったきっかけを教えてください。

中島:昨年の設立段階でお声かけをいただきましてね。

もちろん趣旨も素晴らしいし、40年も獣医の仕事をやっていると、これは普通のケガじゃないよね、とかどう考えてもおかしな症例ってのがあって

警察から色々な事例が持ち込まれてくることも多々ありましたからね。他のメンバーである弁護士の先生方の意気込みに賛同したのはもちろんのことです。

日々の診療の中で、動物虐待が疑われる事案に出会ったときはどのように対応されていたのでしょうか。

中島:昔は今のように法整備もしっかりされていなかったでしょう。

ドアに挟まって足が折れたとか、ベランダから飛び降りて骨折したとか、そんな症例の子たちがいよいよ悪くなってから連れてこられたりすることが多かった。

今でいう「ネグレクト」状態の子はたくさん居たね

それでね、飼い主さんの管理ミスへの指摘だったり、ええ加減な飼い方してたらあきませんよ、って言うことよりも、私たちとしてはまずはその目の前の患畜を助けることが第一でしたね。

最近はどのような変化を感じますか?

中島:近年では確かに変化は見られますね。

動愛法の改正もありましたし、獣医師に対しての動物虐待の都道府県・警察への報告義務も加わりました。

例えば、脚が切断された野良猫とかが運び込まれてきたりするんですが、連れて来るのはほぼ当事者でなく、周囲の方が見るに見かねて、ですね。

その時点ではもちろん誰がやったのか分からないわけですよ。

誰がやったとかそういうとこを追及することよりも目の前の動物を治してあげることが最優先だからこそ、ここで共にどうしたらよいのかを考えてくれるどうぶつ弁護団、ってのが必要なんです。

どうぶつ弁護団の活動と動物病院の連携について教えていただけますか。

中島:そうですね、例えば、「骨折」しているとして、折れ方っていうのが色々あるんですね。

交通事故で車に当たって折れるとか、ドアに挟まって折れるとか、高いとこから落ちて折れる、動物に咬まれて折れる、など。

我々獣医師は経験上見ればある程度骨折の理由が分かるのですが、弁護士の先生方からしたら骨折は骨折、じゃないですか。そういう時に我々の知見を利用してもらっています。

傷もね、外傷といっても、刃物で切ったのか、尖ったもので突いたとか、動物同士の喧嘩で咬み合ってできたとか、交通事故でズル剥けになったとか、それなりに特徴があります。

古い傷になってくるとパッと見ではわかりにくくなりますので、そのようなケースでは法獣医学の先生方がもっと詳しいわけです。だから、どうぶつ弁護団に専門職である獣医師が協力するってのは当たり前なんです。

動物愛護においては「後進国」と言われる日本ですが、2019年には法改正が成立するなど少ーしずつ動物に優しい国へと向かっていて、ボランティア団体も増えています。

とはいえそのほとんどが、財源面や精神面で疲弊している印象。

虐待する人を減らすという根本へのアプローチのために、「どうぶつ弁護団」が新たな切り口で、負の連鎖を少しずつ変えていく、そんな未来になるといいなと思います。

「どうぶつ弁護団」の公式サイトでは、虐待を報告するフォームがあります。自分ではどうしてあげていいか分からないそんな場面をこれまでは見て見ぬふりをしていたことも、団体が主体となって告発など働きかけをしてくれます。

そのための財源として賛助会員も募集しているようです。年会費制で5,000円/年で入会が可能みたいです。(寄付金控除の対象ではありません。)

ほかにも、賛助会員募集のチラシを「私のお店、置いてあげるよ!」「うちの団体の会報に挟んで配るよ!」といった設置・配布先の募集も開始してるみたい。

何から始めていいか分からないという人は、選択肢のひとつにしてみてはいかがでしょうか。

◆関連リンク
特定非営利活動法人どうぶつ弁護団 – 公式サイト

 

この記事を書いた人

このみ

花や夕焼け空を眺める時間が好きです。

ライター一覧

コメントを残す

日本語が含まれないコメントは無視されます。コメントは承認後に表示されます。良識のあるコメントを心がけ、攻撃的な表現や他人が傷つく発言は承認されません。