
王子公園にある国重要文化財『旧ハンター住宅』が、約60年前に建物のあった「北野」に戻るみたいです。
神戸市灘区青谷町1-1-4

王子公園の中にある「旧ハンター住宅」は、もともと中央区「北野町3丁目」にあった建物を昭和38(1963)年に移築したもので、現存する神戸の異人館の中では最大規模のものの1つ。
最初に作られたのがいつかは、はっきりと分かってないそうですが、明治22(1889)年頃、ドイツ人がイギリス人の技師に依頼して作ったものといわれてます。
それをイギリス人の「E.H.ハンター氏」が買い取り、改造して今のような形に仕上げたもので、国の重要文化財に指定されてます。
画像:神戸市資料より
王子公園は、関西学院大学の新キャンパスや、新スタジアムの建設、動物園のリニューアルなど再整備が計画されてます。
現在「旧ハンター住宅」がある場所は、動物園から「スポーツゾーン」へと変更されて、新スタジアムを建設予定。
建物を一体どうするのか?
2023年に市会に提出された「再整備基本計画(素案)」では、「解体・再建による耐震工事に際して、北野地区への移築の検討を進めます」とされていました。
そこで移転の候補地として神戸市が選んだのが、2023年に市が文化財保護のため購入した「旧山口邸」の敷地。北野町1丁目にあり、約60年前まで「旧ハンター住宅」があった場所とは異なります。

しかし今年1月に移築を諮問した神戸市に対して、市の文化財保護審議会からは厳しい意見も出たのだそう。
今回、審議会から神戸市に対して答申が出されましたが、その内容を見ると、移築について事実上認めつつも「重要文化財建造物の移築は本来行うべきではない」「移築することにより旧山口邸の文化環境の毀損に繋がる」といった意見や、移築時の条件も記されてます。
神戸市文化財保護審議会の答申
重要文化財建造物の移築は本来行うべきではないという意見、および移築することにより旧山口邸の文化環境の毀損に繋がるという意見も踏まえ、次の付帯条件を申し添えます。
1. 旧ハンター住宅の耐震化工事を確実に行い、旧山口邸敷地内の安全を確保すること。
2. 旧山口邸の保存を確実に行い、庭園の重要な要素を残すこと。
3. 旧ハンター住宅を旧山口邸へ移築する経緯を明示し、掲示すること。
4. 将来的には、旧ハンター住宅が建っていた場所への移築を検討し、旧山口邸の庭園も旧状を復元すること。

北野には「ハンター住宅」のあった坂が「ハンター坂」という名となって今も残ってます。
せっかくならこの坂の上に戻ってきてほしいところでしたが、今回は難しかったみたい。異人館の中でも最大の規模ということで、条件に合う土地を探すのはなかなか大変だったのではないでしょうか。
移築にあたっては木骨れんが造り2階建ての建築物を一度解体し、耐震化したうえで建て直すなど、技術的なハードルも高いようです。
王子公園にある「旧ハンター住宅」を見ることができるのも、おそらくあと数年。王子動物園に入園した人なら無料で見学できますので、公開日に足を運んでみてはどうでしょうか。
◆関連リンク
・国指定重要文化財「旧ハンター住宅」 – 神戸市
やよい
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