北区にある、気になってた『鳥居』を調査【最終回】埋蔵金伝説が眠る丹生山で見つけた「本当の宝」。失われゆく千年の記憶

ともみん

空気がぐっと冷え込み、山あいに冬の気配が近づいてきました。神戸市北区の丹生山系では、木々が深い秋色に染まり始めています。

第1弾~第8弾がまだの人は、お先にどうぞ。

焼失した大寺院と、埋蔵金伝説

かつてこの山には、平清盛の時代に繁栄を極めた大寺院があり、いくつもの堂宇が立ち並んでいたと伝えられています。

しかし、戦国の世、寺は三木の別所氏に味方したことで羽柴秀吉の怒りを買い、一夜にしてその壮麗な伽藍はすべて焼き尽くされました。

その混乱の中で、誰かが「貴重な何か」を地中に隠したとしても不思議ではありません。

暗号のような古い歌

そんな過去を映すように、ふもとの里には「財宝が眠る」という埋蔵金伝説が語り継がれていました。手がかりとされるのは、古くから伝わるひとつの歌。

「朝日照る 夕陽輝く 萩のもと…」

この歌が、宝のありかを示す「暗号」なのだとか。平成12年の『丹生の里だより』には、この伝説を語る地元の方々の証言が記録されています。

「この歌をもとに実際に掘った人々がいた」とあり、彼らが見つけたのは財宝ではなく木樵りの古い棺だったそうです。

今ではこの話を知る人も少なくなりましたが、地元には今もこの歌を口にできる方がいらっしゃいます。もしかするとまだ見つかっていないだけで、「貴重な何か」は土中に埋まっているのかもしれません…。

途切れゆく千年の記憶

この一年、丹生山に伝わる物語を追いかけてきました。神戸市、三木市と地域をまたぎ、多くの方にお話を伺いました。

けれど取材を重ねるうち、ある寂しさを感じるようになったのです。昭和の郷土誌や古い記録に記された伝承を地元の方に尋ねたとき、どの場所でも返ってくる同じ言葉がありました。

「知らんなぁ。昔の人なら知っとったかもしれんけどなぁ…」

“昔の人”とは、90歳を超える世代のこと。戦前の“語り部”に直接耳を傾けた最後の世代です。そして、ほとんどの場合、その方々にお話を伺うことはもう難しくなっていました。

三木市と神戸市にまたがるこの一帯で、千年以上ものあいだ語り継がれてきた数々の魅力的な伝承や物語――。その多くが、今、静かに途切れようとしています。

今も残る「日本昔ばなし」の風景

子どもの頃、このあたりを通るたびに、アニメ『日本昔ばなし』を思い出してワクワクしたものです。山の向こうから鬼が現れそうで、どこかに神様がひっそり住んでいそうで。

語り手は失われつつありますが、そんな“昔ばなし”の風景は今もこの里に残っています。都会から少し離れるだけで、人と自然、神と仏が寄り添っていた時代の気配に出会えるのです。

筆者が山上で見つけた「宝」


丹生神社(神戸市北区山田町坂本)※2025年春撮影

今年の春、初めてこの山に登った時のこと。山上の神社で手を合わせていると、ぶんぶんという心地よい羽音が聞こえてきました。

その音を辿って横へ回ると、拝殿の隙間に無数の蜂が出入りしています。地元の方に伺うと、拝殿の中でニホンミツバチが巣をつくっているのだとか。それも何年も前から、毎年この場所へ戻ってくるそうです。

生態系にとって重要な役割を持つ日本古来のミツバチが、今もこの山を選び続けている。それは何を意味するのでしょうか?


丹生神社の拝殿の隙間に出入りしていたニホンミツバチ

この里には、4世紀ごろから人が住み始めたといわれています。台風などの自然災害が少なく、穏やかな気候に恵まれたこの場所には、千年以上にわたり人々が暮らし続けてきました。

もしかすると、この山のどこかには、かつての大寺院の遺構や貴重な鉱石――お金に換えれば高価な何かが、今もひっそりと眠っているのかもしれません。けれど、私がこの山で見つけた「宝」は、それとは別のものでした。

それは、この山が今もふもとの里に与え続ける清らかな水。作物を育む肥えた土壌。そこから生まれる実り。ニホンミツバチが巣をつくり、世代をつないでいける本来の豊かな自然。そして、千年の時を超えて受け継がれてきた、人と人とが顔を合わせ、囲炉裏の火を囲み、田のあぜ道で語り合いながら紡いできた数々の魅力的な物語たち――土地の記憶です。

それこそが、この山の「本当の宝」なのではないか。長い取材を経た今、そう感じるのです。

あなたにとっての「宝」とは、なんですか?

【丹生山ハイキング情報】
アクセス: 神鉄「箕谷駅」からバスで約15分(丹生神社前下車)
所要時間::往復約4~5時間
山頂までのハイキングの様子↓

山頂の丹生神社までは登山道が整備されており、登山初心者の方にもおすすめです。山頂にはバイオトイレもあります。

木漏れ日が差す道を歩きながら、古代から続く「祈りの山」を体感してみてはいかがでしょうか。

【取材・文】ともみん
神戸市北区の地域情報を中心に執筆し、不定期で投稿している神戸在住のライターです。
大学卒業後は、大阪・東京・アメリカ・カナダと移り住んだのち神戸へ帰神。やっぱり神戸が落ち着く。
国内の自然を巡るひとり旅にもハマり中で「ともみんタビ」というYoutubeチャンネルで旅Vlogも配信しています。

 

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