2021年7月末に、神戸では変異した新型コロナウイルスの「デルタ株」に感染した人の割合が過半数を超えたという怖いニュースが入ってきました。
ただでさえ、ウイルスとかいう、本当にあるのかないのか、見えないものへの恐怖を感じているところに、追い討ちをかけるような「変異」という言葉に、多くの人が恐れおののいたと思います。
変異したウイルスへは、ワクチンが効くとか効かないとか、いろんな噂も飛び交っています。
ワクチン接種を実施している臨床医の立場から、感染拡大だけでなく、そういった人のうわさが拡大しているところも、恐ろしいなと感じたのが最初の感想です。
しかし、やみくもに恐れることはせず「科学リテラシー」なるものを身に着けて、正しくコロナウイルスと向き合うことが重要です。
今回は、みなさんが新型コロナウイルスに対して、しっかりと対策をおこなえるようにすること、接種が進むワクチンへの理解を深めること、そしてどうすれば新型コロナウイルスと向き合えるかといったお話しから、少し脱線した話まで、できる限りみなさんに正しく「新型コロナウイルス」を理解してもらえるように書いていきます。
少し前まではコロナと言えばビールでした。ライムを飲み口から入れて、楽しそうなお兄さんたちが西海岸のビーチあたりでズンチャカやっているところに添えられる、明るいイメージの飲料の代名詞でした。しかし、ある時を境にコロナと言えば暗いイメージの「ウイルス」になってしまいました。
このコロナ、新型と名前がついているので新しくできたものかというとそうではなく、もともとコロナウイルスというウイルスは昔々から存在しています。
医療の現場にいると、冬場に風邪を引かないのすごいと言われることがありますが、我々も人間ですので普通に風邪をひくことがあります。
その風邪の原因となるウイルスのひとつが「コロナウイルス」です。
コロナウイルスは顕微鏡で見たときに、表面の突起が王冠(crown)に似ていることからギリシャ語で王冠を意味するコロナ(corona)と名付けられました。では何が、新型かというと、冒頭の変異にかかわる部分になります。
新型コロナウイルスとは、元々あったコロナウイルスがもっている「情報が変異した」ウイルスになります。
二重か一重か、太りやすいか痩せやすいか、そんな人間の身体的な個性は遺伝子が決めています。遺伝子は情報の塊で、コロナウイルスも俺がコロナや!と言わんばかりに自己の情報をもつ遺伝子をもっています。
ウイルスはこれらの遺伝子の本体をコピーしてウイルスの数を増やしていきますが、増える過程で遺伝子のコピーミスが一定の割合で出てしまいます。
ありがたいお経を写経してたら途中で間違えてしまう、これと同じようなことがウイルスの複製でもおこっています。写経で漢字を書き間違えてしまうがごとく、遺伝子の複製をミスしてしまう、この書き写し(コピー)の精度がコロナウイルスでは低めだと言えます。新型コロナウイルスでは2週間に約1回、遺伝子の複写ミスが起きており、このミスが「変異」と呼ばれる現象です。
そして変異という言葉ですが、変異ウイルスや変異種、変異株、など似たような言葉が並ぶなかで、従来とは違う情報のまま繰り返しコピーされて増えたウイルスをまとめて正しい用語としては「変異株」と呼びます。
新型コロナウイルスは、持っている遺伝情報が変異したことで感染力が従来のコロナウイルスより増大し、その結果、多くの人に咳や熱などの各種感染症の症状を引き起こしていると考えられています。
昨今話題の「デルタ株」や「ラムダ株」も変異株の種類、つまり写経で言うところの「書き損じた場所の違い」で分けている分類になります。これらは感染力が新型コロナウイルスの中でも強い方だと言われています。
そのコロナウイルスを封じ込めるべく、人類の英知を集結させて開発されたワクチンについて述べたいと思います。
ウイルスが人間に感染することで、ウイルスは人間の体を使って同じウイルスを増やしていきます。その時に作られるウイルスを攻撃して排除するために「抗体」というものを作ります。
それがいわゆる免疫で、外敵から人間を守るための武器となります。これは、もし万が一、ウイルスが次に体の中に入ってきたときにやっつけやすくするために作られています。
変異株に関しても、まだまだ研究の余地はありますが、現在市販のワクチン接種によって一定の予防効果があると言われています。
従来のワクチンは「不活化ワクチン」と呼ばれていて、ウイルスの病原性をなくしたものを注射で人体に入れて、抗体を作る方法によって免疫力をあげています。
今回新たに出てきたワクチンは「mRNAワクチン」と呼ばれ、開発から製造まで迅速に対応できるものであるため、今回のような急速なパンデミックの際に、有効であると言えます。人類史上初めて、活用されることとなりました。
コロナウイルスのワクチンを打つと不妊になるとか、遺伝子に組み込まれるとか、色々な悪影響があると報じられていますが、デマが非常に多いです。(少なくとも前述の二つは論理的に否定できます。)
副作用はゼロではないです。実際に臨床医としてワクチンを多くの方に接種をおこないましたが、中には接種後に発熱して寝込んだ方もいます。
しかし、そういった副作用は2・3日で改善することがほとんどですし、打つことで予防の観点からメリットがでることは明確であり、感染予防に加えて、万が一の感染後に、各種感染症症状を軽減する作用もあります。
自分の命を守るだけでなく、これ以上、感染拡大による様々な犠牲を増やさないためにも、コロナに対する情報を的確にとらえて、理解することが必要です。
デマを信じてしまったせいで、不利益を被らないためにも、一定の知識を持つことが重要です。例えば、生活習慣病がある方や妊娠中の方は、コロナウイルスに感染すると重症化するリスクがあるため、ワクチン接種は重症化予防目的で、推奨されていますが、デマを信じて接種を希望しない方も多数います。(生活習慣病や妊娠などほかの疾患との関連性は次回、寄稿予定です。)
正確な知識があれば、科学的に何が正しくて何が間違っているかをきちんと判断する力を身に付けることができます。
この力は「科学リテラシー」といいますが、それらをしっかり身に着けることで、安全な生活を送ることができるようになります。多くの方が安心して暮らせる社会になってほしいと思います。
南 辰也 医師 記事一覧
医療法人社団澪標会 理事長/しおかぜメモリークリニック 診療部長。淡路島に生まれ、幼少から神戸のまちに羨望のまなざしを向けつづけ、晴れて神戸で医師として診療に従事することに。臨床の傍ら、医療の正しい理解をモットーに発信を続けてます。
ワクチン接種は自由であるべき。
今はよくとも数年後何があるか誰も分からない。
デマも勿論あるだろうが急遽作られたワクチン、接種に躊躇する人がいて当然。
安全を謳えば謳う程、何だか胡散臭い。
要は自分で後悔ない選択をしろってこと。
新型コロナウィルス関連の記事は評価しますが、現在神戸でも
爆発的に感染者が増えているのにも関わらず、神戸ジャーナルでは
グルメやイベントの記事ばかり掲載しているのはなぜでしょうか?
今は出来るだけ不要不急の外出を避け、少しでも医療崩壊を避ける
ように我々神戸市民が協力するべき状況ですが、グルメやイベント
を紹介するということはこれらの流れに反していますよね?
一度編集部の見解をお聞かせください。