世界から見る、日本の「コロナ禍終息」シナリオ  南 辰也

ライター:ゲストオーサー

こんにちは。兵庫県にも8月20日から緊急事態宣言が出され、また自粛生活を送ることになりました。みなさんもいつまでこんな世の中が続くのか不安になっていることだと思います。

コロナ禍での臨床現場では、今までとは異なる状況にいつまで遭遇しつづけるのかと、私も不安に感じています。

とくに、千葉県で、新型コロナウイルス感染症のため自宅療養中だった30代の妊婦さんが、入院先が見つからないまま、自宅で出産してしまい、早産だったために適切な処置ができず、赤ちゃんが死亡したとというニュースには悲壮を感じざるを得ませんでした。

現在、早産であったとしても、早期に処置をすれば、乳児の救命率はかなり高くなっているので、コロナ禍による医療体制の劣化が、医療自体を後退させているようにすら感じてしまいます。

この医療崩壊を食い止めるために、いま私たちがすがることのできるのがワクチンだけになっています。できる限り早急に、コロナワクチンの接種が国民全体で完了することを願っています。

今のところ、mRNAワクチンが妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすという報告はありません。妊婦さんだけではなく、基礎疾患を持たれている方、また、健康な方であっても、すべての人でワクチンの接種をすることをお勧めします。

基礎疾患の中でも、生活習慣病(高血圧や糖尿病、高脂血症といった、食生活と密接にかかわっている病気)は、自粛期間中の過ごし方によっては悪化している人がいるんじゃないでしょうか。

自粛生活やテレワークだと、運動量が意図せず減ってしまい、反動で食事量が相対的に多くなると、そのせいで生活習慣病は悪化してしまいます。そうならないためには、屋内でできるようなものでいいので、適度な運動を意識的に継続することが大事です。

ほかにも、コロナ禍が原因での精神疾患発症をよく診るようになっていると肌感覚的に感じています。とくに、外出をしなくなったせいで、人とのかかわりが希薄になり、認知症やうつ病を発症する人は増加している印象があります。

 

 

人間はもともと社会性を存分に持つ動物ですので、健康な精神を保つためには社交の場を設けるようにしましょう。ただし、非対面でITツールを活用することが推奨されます。

早く会食をしながら談笑する生活にもどりたいなと思います。元の生活に戻るにはどうすればいいのか、はたまた、コロナ禍が終息して元の生活には戻ることが可能なのか、今後、日本ではどんな風にして未曽有の大災害は終息していくか、私なりに推敲してみました。

まずは世界に目を向けてみましょう。世界において、初期段階で封じ込めに成功したと言われるのがイスラエルです。(他には、ベトナムやコスタリカがあげられます。)

イスラエルはユダヤ教の信徒が、集団礼拝(いわゆる密な空間)を続けることが懸念されたために、全土で都市封鎖(ロックダウン)を2019年の4月と、かなり早期に決行しました。

外出は原則として自宅から500m以内に制限され、学校やショッピングモールなど、大人数が集まるような場所も閉鎖されました。

それだけでなく、PCR検査も1日1万件のペースで、大規模に実施し、感染者が発見された場合には強制的な隔離をおこない、早期の封じ込めに成功しました。

イスラエルが成功したポイントは実行力だと思います。イスラエルは民主主義の国なので、決してすべてを強制されたわけではありません。迅速な対応の影には、政府の力だけではなく、技術立国であることから新しい技術に寛容であり、国民も自ら協力したからこそ、超ハイペースなPCR検査の実施と陽性発見時の隔離が実行できたと推測されます。

イスラエルに多いユダヤ教徒は教育こそが身を守る手段と考えるユダヤの教えがあるので、何が正しいのかを判断する科学リテラシーを身に着け、ワクチン接種の有効性を早期に理解できた人が多かったのかもしれません。

早期の対応は、これが正解に近いのではないかと思います。では、2021年の日本ほど感染拡大が深刻な状況において、このような封じ込め作戦と迅速対応作戦は有効かどうかですが、正直、もう間に合わないと思います。

政府の対応が悪いだけでは説明が足りず、我々市民の協力姿勢にも目を向けたいと思います。ワクチンにしろ、外出自粛にしろ、結局のところは「要請」でしかなく、それを守らなかったからと言って、罰則が一般国民にあるわけではありません。

 

 

我々が古くから培ってきた他者への思いやりを、自身のためだけではなく、自分の家族、となりのおじいちゃん、ひいては日本全体のために、向けることが重要で、やさしさベースの行動へと自身の生活を変容させることも重要ではないでしょうか。

とはいえ、まちに出たい気持ちも理解はできます。先ほども書いたように人間は社会性の高い動物ですから、精神衛生的には楽しい時間をみんなで共有することが非常に重要で、それをしていた人がしなくなると各種の精神疾患の発症リスクが増加してしまいます。

では、コロナ禍への対応をしつつ、精神状態の安定をどうやってはかればよいのかというところで、イギリスをみてみましょう。

イギリス政府は感染者数減少を理由に2021年5月、海外旅行の再開を認めると発表しました。イスラエルやオーストラリアなどのワクチン接種が進む国を対象に、隔離などなしで行き来できる国と、日本など、数日間の隔離をすれば渡航が可能である国に区分して、海外旅行の再開を実行しています。

イギリスでは、「ワクチン打ったから大丈夫」と、ワクチンを免罪符として日常生活を取り戻そうとしている印象があります。私としては、イギリスのような日常生活に戻ろうとする姿勢が現段階の日本でも、必要なのではないかと感じています。

日本はすでに感染爆発がおこり、緊急事態宣言が頻繁に出るような状況であることを鑑みると、すでにイスラエルのような早期の段階で有効な封じ込め作戦は困難極まりないと思います。ただただ政府への不満が募るだけだと思います。

緊急事態宣言慣れしてしまった市民が多くいるような状況で、いまさら完全な都市封鎖をしても精神的に規則を守るのが困難だと思います。

なので、ワクチン接種をより積極的に実施することで、感染拡大の予防としつつ、万が一に感染することも念頭に置いて、重症化予防の効果を期待するために接種をいそぐのが良いのではないでしょうか。感染の早期発見と、感染初期からの治療法を早急に確立し、いかにして、重症者を出さないかというところに比重を置く方が建設的ではないかと思います。

20世紀の初頭には、インフルエンザウイルスもいまの新型コロナウイルスのように恐れられる存在でした。インフルエンザという病気も重篤化する方が一定数いますが、新型コロナウイルスほど恐れられていません。それは、インフルエンザでは、ワクチンの普及と確立された治療法が浸透しているからです。

もちろん、インフルエンザと新型コロナが一緒というわけではありませんが、少なくとも、コロナ禍終息に向けて、インフルエンザのように、「かかっても死なない」と思うだけの精神的な安心材料は必要かと思います。その差は精神的な安心の有無だと思います。これらを求めることは非常に重要なことです。

感染はもちろんしない方が良いですが、感染してしまった場合でも大丈夫と思える方法論を早急に確立し、精神的な安定をもとに建設的なアフターコロナの生活も同時に求めていくことが日本におけるコロナ禍を終息させる必要条件となるでしょう。

南 辰也 医師 記事一覧
医療法人社団澪標会 理事長/しおかぜメモリークリニック 診療部長。淡路島に生まれ、幼少から神戸のまちに羨望のまなざしを向けつづけ、晴れて神戸で医師として診療に従事することに。臨床の傍ら、医療の正しい理解をモットーに発信を続けてます。

 
ゲストオーサー
ライター:ゲストオーサー

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2 件のコメントコメントを残す
  • 匿名さん

    イスラエルはワクチンの接種が終わった段階で変異株が流行し、現在世界で最も感染者が急速に増えている国になったというニュースを最近見たばかりですが…

    2021年8月25日10:07 PM 返信する
    • 南辰也

      コメントありがとうございます。著者です。
      イスラエルに関しては、感染の再拡大を受けて、6月25日より屋内でのマスク着用が再び義務化されました。感染者数に関しては、ピーク時と同じくらいにせまりつつありますが、死亡者は増加傾向にあるといえど、ピーク時よりは少なく、感染者数に対する死亡者数は減っています。感染拡大には、一般市民の中の危機感が希薄になり、ルールが十分に守られなかったとことも原因かと言われています。6月中旬に新政権が発足し、政局により対応が出遅れたことやいったんは感染が抑えられたことによる市民の心情の変化など、色々な理由が重なったと考えられます。これを受け、7、8月には政府が感染予防のための強い措置を取っており、これから収束に向かっていくことが予想されます。つまり、ワクチンだけでは感染拡大を抑えるのは難しいですが、ワクチンがない時よりは死亡率は下がっていると言うことが予想されます。身を守るためにはワクチン接種が推奨されることが科学的に明白になるにはまだまだ先だとは思いますが、少なくともその可能性は示されているのではないでしょうか。

      2021年8月26日2:13 PM 返信する