万年筆用カラーインク「Kobe INK物語」を開発した「ナガサワ文具センター」の竹内直行さんに開発の苦労話を聞いてきた。神戸発のオリジナル文具への想い

先日、「第10回日本マーケティング大賞」の奨励賞を受賞した「ナガサワ文具センター」が製造・販売する万年筆用インク「Kobe INK物語」。需要自体が年々低下している万年筆業界がおかれている状況の中で、「Kobe INK物語」という『インク』がキッカケで、万年筆業界全体が盛り上がってきているんです。

今回は、「Kobe INK物語」の開発者で、ナガサワ文具センターの商品開発を担当する竹内直行さんに話を聞いてきました。竹内直行さんが持っているのは、最初に販売した「Kobe INK物語」の「六甲グリーン」。

「Kobe INK物語」は、万年筆用インクを「地域名+色」という商品名で販売し、現在までに80色以上作ってきた万年筆用インクシリーズです。「六甲グリーン」「旧居留地セピア」「岡本ピンク」など独特のネーミングと、ラインナップ。実際に現地に行って取材を重ね、ストーリーと共に販売し人気になっています。

「第10回日本マーケティング大賞」の記念講演会に行った時の記事はこちら。

万年筆用カラーインク「Kobe INK物語」が賞をとった記念の講演会に行ってきた。ナガサワ文具センターが作った人気商品

2018年7月4日

講演会にも行ったのですが改めて話を聞いたのは、サクセスストーリーではなく、開発での苦労話を聞こうと思ったからです。ってことで、講演会では語らなかった苦労話を聞いてきました。

11年間販売しているシリーズはどのように続けてきたのか?「生活の一部だから、忘れたことはない」と語る竹内さん。仕事の一環だがライフワーク。プライベートでも神戸の色々な街にカメラを持って歩くのは日課になっているそうです。

神戸の魅力に惹かれて神戸の会社に就職したにも関わらず、阪神・淡路大震災があった。「神戸発信で神戸を盛り上げたい」と、「Kobe INK物語」の開発を始めました。

「自分の思うことをとことんやろう」と開発を始めたが、最初はなかなか売れず、社内でもそんなに評価はされていなかったそう。ただ、1882年(明治15年)創業の神戸の老舗文具店として、社長と竹内さんは「神戸を盛り上げたい」という思いで一致し、会社として長く続けてこれたそうです。

「儲けはでないまでも、長く続けるには赤字は出したくない」という思いはありつつ、「大好きな神戸と仕事が一致」して続けてこれた。「仕事として、感触がつかめてきたのは、8色目の「有馬アンバー」くらいから」とのことで、そのあたりから、「ここの色も作って欲しい」ということをよく言われるようになったとか。

インクNo:#8 有馬アンバー
古くは日本書紀に名が見受けられる古い歴史を持ち、太閤秀吉公が好んだ地として知られる有馬の名湯”金泉湯”の深みある色を表現しました。心身ともに安らぎ執筆に勤しむ文豪になった気分で机に向かってみられてはいかがでしょうか。

小売業として文具・事務用品を販売していたが、オリジナル文具を生み出したいという思いは入社した当時からあったそうで、現在までに「Kobe INK物語」も80色以上が販売されていますが、「ここまで続けるとは、誰も思ってなかったと思う」とニンマリ。

「アナログの復活に、インターネットなどのデジタルがあった」と、「Kobe INK物語」の人気はインターネットを通して海外にも広がり、アメリカやカナダ、ここ3年は、台湾のファンが多くなってきたそう。神戸は台湾からの観光客も多いので、「Kobe INK物語」を買いに来ている人もいるそうです。

東京で売れる商品を神戸から発信したいという思いがずっとあったそうで、そのキッカケとなったのが展覧会や東京銀座との「コラボインク」。あくまで「Kobe INK物語」という冠は残してのコラボです。こういった活動から全国的に知られるようになったそうです。

「WORLD」「兵庫医療大学」「ナガサワ文具センター」がコラボして作られた神戸発の医療用ウエア「神戸スクラブ」。「Kobe INK物語」が色の監修をしていて「神戸ボルドー」「港島アイランドブルー」の2色が作られました。

色のコラボはあまり聞いたことがなかったのですが、今でも結構声がかかるそうです。

大丸神戸店の「六甲グリーン」と「波止場ブルー」を使ったライトアップ。2015年と2016年の2年続けて実施されました。ライトアップのプロと竹内さんが色の監修をするという、面白い取り組みです。改めてライトアップされている写真をみると感慨深いものがあります。

「iPhone」と「Kobe INK物語」は同い年。「意識はしたことはないが、おもしろい偶然」と若干意識してなくもない竹内さん。デジタルとアナログの偶然。デジタルにはないアナログの良さは、今後もインターネットを通して広がっていくのかもしれません。

80色以上もある「Kobe INK物語」を選ぶ行為自体もおもしろいと思いますので、興味がある人は、ぜひ「ナガサワ文具センター」に見に行ってはいかがでしょうか。

◆関連リンク
ナガサワ文具センター – 公式サイト

 

この記事を書いた人

カズマ

神戸ジャーナル 編集長

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