全国でも珍しい人形専門の博物館『神戸ドールミュージアム』で、知られざるフランス人形の魅力に触れる

子どもたちの憧れ「ベベ・ドール」

大人のファッションドールから、さらに枝分かれしたのが「子ども」を意味する「ベベ」・ドール。サイズも40cm前後、ビスクも幼い顔だちになって、子どもの玩具、抱き人形として広まっていきます。

こちらの「アー・ティー」製、「アッシュ」製のドールは、“幻の人形”と呼ばれるほど生産が少なかったもの。本場フランスでも見ることが少ない貴重品です。

中でも、独特の表現で人気が高いのが、「ロングフェイス」と呼ばれる、アンニュイな表情の人形。別名「トリステ」、「悲しみのジュモー」とも言われるそう。

入口で顔ハメ看板になっていた、赤いドレスの女の子もいました。1883年製「ブリュー・ジュン」は、ちょっと大人っぽいクールな顔立ちで、ミュージアムの看板娘としても活躍しています。

館長曰く「レア中のレア」というメーカー「パニエ―」の1885年製ドール。「ピケ」と呼ばれる道化師風の衣装が特徴です。パリの人形工房が作る人形は、子どもたちの憧れの的で、クリスマスの時期には大変な人気を集めたそうです。

2階の入口で目が合った、「ブリュー」の1883年製ドールは、べべ・ドールながら、高さ90cm近くと大きく、衣装もリアル子供服サイズ。インパクトある顔立ちで、フロア入口のポジションを獲得したそうです。

こぼれ落ちそうな目は、「ブリュー」のドールの中でもほとんど見ない大きさ。顔も彫を深くして、バランスを取っています。瞳をよく見ると、黒目の周りはスパイラルではなく茶色に。

人間の眼球をより忠実に再現した目は、一度見たら忘れられません。目ヂカラが凄い。

ドールだけでなく、衣装の着せ替えや小物のアレンジも人形遊びの楽しみ。「パラソルセット」には、傘の骨組みと共に、生地やレース、糸、リボンなど本格的な裁縫道具も揃っています。

欧風の人形の中で異彩を放つのが「オリエンタルジャパニーズ」。赤い着物にまとめ髪で、ちょっとつり目気味。昔の日本人のイメージはこんな感じだったんでしょうか。

実は、19世紀後半はパリで万博が何度も開催され、日本の美術工芸品が話題になった時期。当時の流行を伝える貴重な史料でもあるんですね。

この頃のビスク工房も、自社の宣伝と技術を競う場として、博覧会でのメダル獲得に力を注いでいました。「ジュモー」が、1889年の第4回パリ万博の際に出したポスターのオリジナルも展示されています。

この時に建設されたエッフェル塔を描いたポスターは、よく見ると双六としても遊べるデザイン。レプリカは1階のショップでも販売しているので、シャレたお土産としてもおすすめです。

 

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