老朽化したマンションのイメージ
居住者の高齢化や建物の老朽化、管理組合が機能していない、修繕積立金の不足などさまざまな理由から、管理が行き届かなくなったマンションが近年、増加傾向にあります。
こうした管理不全物件は周囲への悪影響が懸念されることから、神戸市は分譲マンションの管理適正化に向けて、これまで任意制度としていた「管理状況の届け出・開示制度」を義務化するそうです。
さまざまな理由から増加する「管理不全マンション」
画像:国土交通省資料より
国交省がまとめた資料「マンションを取り巻く現状と課題」によれば、2021年末時点で国内にはマンションが「約685万9000戸」あり、国勢調査のデータをもとに計算すると、国民の1割超が居住していることになる規模なんだそうです。
しかし築30年以上と築年数が経っている物件も多く、2021年末時点で築40年以上が「115万戸以上」に上ります。
この時点の推計で、10年後には2.2倍の「約250万戸」、20年後には3.7倍の「約425万戸」に急増するとみられています。
こうした築年数が経っているマンションでは、さまざまな課題を抱えています。
区分所有者が賃貸に出したり、誰も住まずに空き住戸となったりする「非居住化」のほか、マンション総会の決議では「全区分所有者の数」が分母となるため、所有者不明住戸が増えると大事な物事か決められなくなるという事態にもなります。
画像:国土交通省資料より
適切な管理が行われていないと、共用部分の老朽化などにより、居住者だけでなく近隣住民にも悪影響を及ぼします。
例えば外壁などの剥落、鉄筋の露出や腐食、漏水、雨漏りなど。建物の傷みが激しくなると、時間的にも金銭的にもコストをかけて対応する必要があります。
画像:国土交通省資料より
国交省は今後のマンション政策の方向性として、適正な管理や修繕を推進し「マンションを長く使ってもらう」ことに加えて、修繕などで機能を回復することが難しい物件については、建て替えなども選択肢に入れ「再生の円滑化を推進していく」のだとか。
今年は「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」も改正される見通しで、例えば所在不明の所有者は集会決議の母数から除外できるようにしたり、多数決の要件も緩和されたりします。
5年ごとに管理状況を届け出、任意から義務化へ
神戸市はマンションの管理状況について、任意の「届け出・情報開示制度」を設けています。
周辺の居住環境に悪影響をおよぼす可能性があるマンションの発生の予防や改善を促して、マンションの「管理適正化」を推進しているみたい。
画像:神戸市サイトより
この制度では、6戸以上の分譲マンションの管理組合は、5年ごとに管理状況の届け出を行う必要があります。そうして市は管理状況の実態を把握して、その状況に応じた助言や支援を行うという仕組みになってます。
管理組合の意向を確認したうえで、市は届け出内容を神戸市サイト上で公開します。
こうして情報開示することで、管理状況を市場から評価されたり、購入を検討している人が管理状況を確認できたりするといったメリットがあります。
市のマンション管理状況の届け出・情報開示制度はこれまで任意制度として運用されていましたが、この制度を義務化し、管理を適正化するために必要な助言や指導、勧告などについて定める「条例」の制定を予定しています。
今年6月4日~7月3日にかけて行われた、管理適正化の推進のための条例案に対する意見募集には、9件の意見が寄せられました。
賛成意見もみられましたが、届け出が義務化されることへの負担増や、5年ごとでは申請漏れが発生するのではないかといった懸念点などが挙げられていました。
市は分譲マンションの管理適正化について、神戸市サイトやセミナー開催などの機会を通じて、マンションの管理に携わる市民への意識啓発や醸成に取り組んでいくみたい。
また義務化としながらも、届け出しなかった場合への罰則規定は設ける予定はないんだそう。
必要な届け出がされていないことがわかった場合は、助言や指導、勧告ができるものとして、勧告に従わなかった場合は意見陳述の機会を設けたうえで、勧告をした内容を公表する・・・という運用にするそうです。
条例案は今年9月に開催される神戸市議会に提出され、可決されれば2026年4月1日の施行を目指すみたい。管理計画の届け出は26年7月1日に義務化される計画です。
◆関連リンク
・マンション管理状況の届出・情報開示 – 神戸市サイト
あさみ
「今年こそダイエット」が口癖です。
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