数ある神戸の観光スポットのなかでも人気が高い『北野異人館街』。
三宮・元町から歩いて15分程度と近く、異国情緒あふれる街並みがおしゃれですよね。
異人館街で最も有名なのが、レンガの外壁と屋根上の「風見鶏」が印象的な風見鶏の館です。
今年10月1日から耐震改修工事が始まり、2025年春ごろまで中に入れなくなるそうで、9月末までさまざまな「クロージングイベント」を開催しています。
明治から続く『風見鶏の館』の歴史と見どころ、そして今しか見られないところも徹底調査してきました。
- 三宮から15分 徒歩でもバスでも
- 異人館街で唯一のレンガの外壁
- こんなところにも!注目の見どころ
- 非公開の「屋根裏部屋」に潜入!
- 「耐震改修工事」で2025年春まで休館
三宮から15分 徒歩でもバスでも
「北野異人館街」は各線 三宮駅からは歩いて15分ほど、各線 新神戸駅からも徒歩10分ほどで着きます。
北野坂を散策しながら歩いて行くのも良いですが、神戸の主要観光スポットを周遊する「シティループバス」で行くのもおすすめ。
街中を走る緑色のバスで、1周約65分で運行。車内にはガイドさんが居て、停留所周辺やスポットなどで解説してくれます。
徒歩でもバスでも、どちらでも観光気分が味わえるので、その日の気分と体力で選びましょう。
北野坂にある「スターバックス 神戸北野異人館店」は、改装工事のため9月29日まで臨時休業中。
工事の幕が張られているので、外からの記念撮影も今はできません。
シティループバスでは、異人館エリアの中心地に下りられます。
異人館街は急な坂も多く、体力を使うので、行きはバスで体力温存するほうが良いかも。
こんなところにも!というポイントをご紹介。なにやらおしゃれな車止めポール、よくみると…
「風見鶏の館」などのイラストが刻印されてるんです。3種類を見つけることができましたが、ほかの館のものもあるかもしれませんね。
『風見鶏の館』のすぐ手前には、平清盛ゆかりの「北野天満神社」があります。
学問の神様・菅原道真を祀る神社で、60段の石段を登ると境内に到着。高台にあるので『風見鶏の館』とともに神戸の街を一望できますよ。
扇子の形をしたおみくじのほか、デザインが月替わりの「切り絵御朱印」などを買うこともできます。切り絵御朱印は人気なので、月の中旬には売り切れていることも。
異人館街で唯一のレンガの外壁
『風見鶏の館』は、異人館街で唯一のレンガの外壁と尖塔の「風見鶏」が印象的な建物で、北野異人館のシンボルとして親しまれてます。
1909(明治42)年ごろ、ドイツ人貿易商ゴットフリート・トーマス氏の自邸として建てられたもので、建物の設計は旧オリエンタルホテルなども手がけた、ドイツ人の建築家ゲオルグ・デ・ラランデ氏。1978(昭和53)年に国の重要文化財に指定されました。
20代のときに日本に来たトーマス氏は、妻のクリステルさんと1人娘エルゼさんとともに、当時は横浜に住んでいたんだそう。
1902(明治35)年ごろに一家で神戸に移り住み、3年後には現在の『風見鶏の館』の場所に転居。この年に建物が完成したと推測されているので、館は約120年も前からこの場所にあることになります。
ドイツ人クラブ「クラブコンコルディア」の30周年記念式典の写真には、トーマス氏が最前列で写っていたそうで、当時33歳ながら貿易事業で成功していたことが伺えます。
しかし娘のエルゼさんが進学するため、1914(大正3)年ごろにドイツに一時帰国。そのころ「第一次世界大戦」が起きたことで、神戸に帰れなくなってしまい、館はそのままに。
後にエルゼさんと連絡がとれるまで、トーマス一家の動向は不明でしたが、当時は一時的な帰国のつもりですべての財産を日本に残していたため、ドイツでの生活は困難を極めていたそうです。
その後1977年にNHK連続テレビ小説「風見鶏」が放送されたことで、『風見鶏の館』をはじめとした「北野異人館街」が広く知られることに。
これを契機に文化財保護のため整備されて、館が一般公開されました。
一般公開されるというニュースは、なんとドイツに住むエルゼさんにも届いたんだそう。
ドイツメディアの日本人記者を通じて、神戸市もかつての住人がドイツに健在であることを知り、館は後に国の重要文化財に指定されました。
1978(昭和53)年に館が一般公開され、その翌年にエルゼさんも訪日。65年ぶりに訪れたんそうで、その後もあわせて5回来日されたそうです。
そういえば、なぜ『風見鶏の館』と呼ばれているんでしょうか。
風見鶏の館に直接確認してみたところ、NHK連続テレビ小説「風見鶏」の放送後に一躍有名になり、一般公開時に『風見鶏の館』という名称で公開されたからなんだとか。
それまでは単に「旧トーマス住宅」「旧トーマス邸」などと呼ばれていました。
こんなところにも!注目の見どころ
そんな『風見鶏の館』は地上2階建てで、普段は非公開ですが「屋根裏部屋」と「地下室」もあります。
非公開の部屋は同館で常時開催されている「探検ツアー」でのみ特別に見学できます。
入口門扉のところで、まず目に飛び込んでくるのが「Rhenania」(レナニア)の文字。これはラテン語で「ライン地域(ラインラント)」という意味なんだとか。
トーマス氏の生まれ故郷は、ドイツ・コプレンツというライン川の港町だったそうで、表札代わりに門扉の上に文字をつけたのでは、と言われてるみたいです。
ちなみにトーマス氏がつくった貿易会社も「レナニア商会」だったそうですよ。
見逃しがちですが、入口ポーチの階段横に気になる「小窓」が。
実はこれは普段非公開の「地下室」の窓で、当時使用人が生活する「附属屋」の機能をもたせた部屋だったそうです。
神戸の異人館では、主人が住む建物「主屋」の背後に、使用人が住む建物「附属屋」を建てて廊下でつなぐ例が知られてますが、『風見鶏の館』では主屋の地下に附属屋がある構造なんだとか。
玄関ドアには、十字架のような、中華風にも見えるデザインが施されています。
一説にはクリスチャンだったトーマス氏が十字架をデザインして取り付けたとも言われていますが、館の不思議の一つなんだそう。
これと同じデザインが、フラワーロードのベンチや柵などにもあります。
それでは館内へ。
1階入口横にあるのが「応接間」です。来客をお迎えする部屋なので、シャンデリアや家具などが華やかな印象です。
見どころはシャンデリアの周りの葉っぱのレリーフ。「アカンサスの葉」というのがモチーフになっていて、ヨーロッパでもよく使われています。
実は屋根上の「風見鶏」の下にあるのも「アカンサスの葉」のデザインなんだとか。
応接間の隣にある「居間」は、雰囲気ががらりと変わり、高い天井には日本の格子模様のようなデザインが施されてます。
室内の意匠が部屋によって変わるのも『風見鶏の館』のユニークな見どころですね。
居間でもシャンデリアに注目です。こちらは滑車付きで、当時はこの滑車を上下させて明るさ調節をしていたんだそう。ガラス部分は復原ですが、支柱や滑車などは当時のものなんだとか。
居間の奥にあるスキップフロアには、休館までの限定で「風見鶏」のレプリカが設置されてます。記念撮影するのにぴったり。
落ち着いた雰囲気の「食堂」は、トーマス氏の故郷ドイツにある「シュトルツェンフェルス城」をモチーフに、中世の城郭のようなデザインが取り入れられてます。
壁面が城壁のようになっていたり、シャンデリアが王冠のような形になっていたりと、華やかで可愛らしいですよね。
トーマス氏は、この城の近くのコプレンツに20歳まで住んでいたそうなので、故郷を思いながらデザインしたのかも。
食堂での注目ポイントはこの中世家具にある「小窓」。食事の準備ができたらこの小窓を開けて、隣の部屋から配膳していたんだそうですよ。
その隣の部屋はというと、キッチンではなく「配膳室」です。
地下にある使用人用のエリアでつくられた食事を、リフトのようなもので1階に上げて、この小窓から食堂側に配膳していました。
この部屋は通常は入れないのですが、「探検ツアー」などに参加すると見られますよ。
使用人用の階段は1人通るのがやっとな横幅です。すれ違うことはできなさそう。
地下と1階の行き来が頻繁だったためか、2階・屋根裏部屋につながる階段よりも傷みが激しいんだとか。
1階のベランダでは、トーマス一家の歩みとエルゼさんの幼少期の写真が展示されています。
100年以上の歴史を持つ異人館も多いなか、当時の生活がわかる写真が残っているのはとても珍しいんだそう。
現在の『風見鶏の館』も広々とした豪華な邸宅ですが、当時はもっと敷地が広かったそうで、裏手にはテニスコートもあったんだとか。裕福な暮らしぶりが想像できますね。
1階の「書斎」には、当時使用されていた家具が綺麗な状態で展示されています。娘のエルザさんが寄贈したんだとか。
注目したいのは天井の部分。こうもり傘のようになっていて、照明がちょうど傘の柄のようになっていますよね。
書斎としながらも、遊び心を取り入れているのがうかがえます。
書斎では当時の表札も見られます。「Gottfried Thomas」(ゴットフリート・トーマス)なので、「G Thomas」=「ジトーマス」なんだそう。
貿易会社を経営していたトーマス氏ですが、「日本赤十字社の終身正社員」でもあるのが不思議に思い、確認してみたところ「薬関係の輸入も行っていたからかも」なんだとか。
経営していた貿易会社では、幅広い商材を取り扱っていたのかもしれませんね。
このように1階は、来客をおもてなしするため、豪華な装飾が施されている部屋が多いですが、一家の生活空間である2階は質素な造りになっています。この部屋の使い分けは「ドイツ人らしい気質」みたいです。
各部屋ドアの「取っ手金具」も、1階は美しい装飾がありますが、2階のものはかなりシンプルになってます。
この金具、実は100年以上前の当時のものが今も使われているんです。
館にはこうした当時のままのところも多く、歴史を感じてわくわくしますよね。
2階に続く階段の手すりは、当時流行していた曲線を取り入れたデザインになってます。
2階に上がるとまず飛び込んでくるのが、ホールにあるユニークな形の照明。
なぜこの形かというと、当時このホールには「ビリヤード台」があったんだとか。
当時のまま残る照明は、細長い台にあわせて付けられたものみたい。こんなところにも歴史を感じます。
華やかな花柄の「壁紙」が印象的なこの部屋は客用寝室です。
壁紙とカーテンのコーディネートに、おもてなしの心配りを感じますね。
客用寝室の隣にあるのが「朝食の間」です。
“朝食”だけの部屋というわけではなく、一家の団らんの部屋というような使い方だったようです。
各部屋に「暖炉」が多いことに気づいたでしょうか?
『風見鶏の館』には3本の煙突がありますが、暖炉は全部で6つあります。隣接する部屋で背中合わせにして、2つの暖炉から1本の煙突につながっている仕組みなんだとか。
かなり省スペースな暖炉ですが、かさばる薪ではなく「コークス」を燃料として使っていたそうですよ。
2階の子供部屋は、普段はワークショップやイベントなどに使われています。
休館までの間は、神戸や風見鶏の館にゆかりのあるアーティストらの「風見鶏の館への想い」の展示がメインになっています。
2階のベランダには「神戸今昔写真展」として、月替わりで写真を展示。今月は休館前の最後の月ということで、『風見鶏の館』の昔と今を比較できる写真が鑑賞できます。
「神戸今昔写真展」のちょうど背後には、来館者がふせんにメッセージを書いて貼ることができるコーナーも。
さまざまな言語で書かれたメッセージやイラストから、『風見鶏の館』を訪れた人の思いを感じますね。
このイベントも今月いっぱいまでとなってます。館を訪れた際はぜひ書いてみてくださいね。
2階ベランダから続く主寝室は、「おみやげショップ」になってます。
通販などは行っておらず、現地でしか買えない限定グッズが盛りだくさんです。
地元企業とコラボレーションした商品もあります。神戸・元町生まれのレザーブランド「Kiichi」が手がけるオリジナルコースターは一番人気。
手作りの本革コースターで、風見鶏のマークが刻印されてます。カラーバリエーションが豊富で、どれにするか悩んでしまいますね。
ガラスマグネット・ガラスマグネット・ガラスブックマーカーなどお手頃なガラス製品のほか、海上保安庁の廃版海図を使った珍しい「ミニレターセット」も人気なんだとか。
長田区の靴屋さん「Belle&Sofa」とのコラボ商品では、国産ヴィーガンレザーを使った雑貨がラインアップ。いずれもここでしか買えないオリジナルです。
非公開の「屋根裏部屋」に潜入!
普段非公開の「屋根裏部屋」を今回特別に見学させてもらえることに!
屋根裏部屋には、1階「食堂」横の部屋で見た、あの1人しか通れない横幅の階段からつながっています。
細い階段を上った先にある「屋根裏部屋」に入ると、まずその広さに驚きました。屋根裏部屋とは思えない天井高ですよね。
屋根裏部屋では、全部で3本ある「煙突」も見られます。阪神・淡路大震災の影響で折れてしまいましたが、その後の復旧工事でしっかり補強されてます。
屋根裏部屋の先にはもう一つ小部屋があり、窓からは海まで見渡せる絶景が広がります。
この小部屋は、尖塔の「風見鶏」の真下部分にあたるようです。
「探検ツアー」などに参加すると見学できるのですが、もうすぐ休館だし、もう見られないのか…とがっかりした人に朗報です。
現在さまざまなクロージングイベントが開催中で、9月23日(土)に休館前最後の「探検ツアー」が開催されます。
9月末まで開催中の兵庫デスティネーションキャンペーンでも、「風見鶏の館&萌黄の館バックヤードツアー」と「風見鶏の館&ラインの館 ナイトビューツアー」が実施中で、まだ申し込みできる枠が残っているみたいなので要チェック。
「耐震改修工事」で2025年春まで休館
阪神・淡路大震災では、『風見鶏の館』も大きな被害を受けました。全壊とはいかないまでも、外壁のレンガはひび割れ、煙突は根元から折れてしまったんだそう。
その後復旧工事では、今後同程度の地震にも耐えられる耐震性を確保するために、レンガをステンレス線で結束させるなどの技術が取り入れられてます。
今後1年半かけて行う工事は主に建物の耐震工事で、外観や内装などはさほど変わらないとのこと。
工事期間中は敷地内への立ち入りはできませんが、外観を見ることはできるそうです。
休館までで見納めになる部屋などもないですが、休館明けに「探検ツアー」などを再開するかどうか、またツアー内容などは今のところ未定みたいです。
長期にわたる休館になりますが、また美しく整備された『風見鶏の館』を見るのが楽しみですね。
場所
風見鶏の館
神戸市中央区北野町3-13-3
開館時間
9:00~18:00(入館は17:45まで)
休館期間
2023年10月1日(日)~2025年3月31日(月)※予定
入館料
大人 500円
2館券(風見鶏の館・萌黄の館) 650円
シティループ1日乗車券持参 450円
高校生以下/65歳以上の神戸市民/障がい者手帳を提示 無料
◆関連リンク
・風見鶏の館 – 公式サイト
『神戸マニア』では、「これ知っとった?」と言いたくなるような、地元を再発見できる神戸のマメ知識を発信中。気になってる場所や不思議な風景などがあれば、情報提供お待ちしています!
復活して欲しいね。