神戸電鉄の湊川駅から歩いて12分ほどのところにある「湊川隧道」。明治34(1901)年に誕生した、この日本初の河川トンネルは、2000年に役目を終え、今は中が見学できる観光スポットになっています。
今回は、そんな湊川隧道を見学できる月1回の一般公開を訪ねてみました。
「湊川隧道」がある新湊川は、明治半ばごろまでは現在の湊川公園、新開地あたりを通り、市街地の中心部に流れていた川でした。普段は流れる水が少なく、穏やかな川だったのですが、大雨になると市街地ではたびたび水害が発生。
また、上流から押し流された土砂が海に流れることにより神戸港の機能が低下するのではないかという指摘もあり、付け替え工事の重要性は明治当初から議題になっていたようです。とはいえ、この工事は大がかりなもの。簡単に行えるものではありませんでした。
そんな中、明治29(1896)年の8月に台風による豪雨によって湊川の堤防が100mにわたり決壊。周辺の街に大きな被害をもたらしたことをきっかけに、「災害対策が神戸市目下の急務」という声が強くなりました。
そして、翌年の明治30(1897)年。大阪の豪商・藤田伝三郎や小曽根喜一郎、大倉喜八郎などの実業家らが発起人となって「湊川改修株式会社」が設立され、神戸における明治の三大土木工事といわれる「湊川の付け替え」が始まりました。
湊川の付け替えが行われた当時は、現代のような重機などの機械などありません。トロッコやモッコ、ノミやツルハシを使った人力による作業で行われたという点も、「湊川隧道」のすごさの一つ。
また、側壁のレンガはイギリス積、アーチのレンガは長手積などデザインも凝っているところも魅力。明治時代の建設技術がどのようなものであったかを伝える貴重な建築物として、2019年には国登録有形⽂化財に登録されています。
「湊川隧道」の一般公開が行われているのは、毎月第3土曜日の13:00〜15:00。観覧料は無料、予約も不要ということで、13時に向かうと、すでに長蛇の列ができていました。一般公開時にはミニコンサートなどのイベントが開催されるのですが、多いときには見学者が300人以上になることも。
隧道内部の混雑を避けるため、入場制限を行う場合があります。ゆっくり見学されたい方は、コンサート終了後、14時20分以降に訪れるのがおすすめです。
入ってすぐのところには、湊川隧道に関する展示パネルがずらり!
湊川隧道に使用されているレンガ。手にとって触ることができる
また、一般公開時には湊川隧道保存友の会による説明会が2回行われます。地図や写真を使いながら、湊川隧道の歴史や特徴などについての詳しい解説が聞けますよ。
一般公開のときに見学できるのは、隧道入り口から 250mほどのところまで。一番奥は人気の撮影スポットで、カメラを片手に写真を撮る人で賑わっています。
レンガ壁の幻想的な空間は、日常から切り離された別世界のよう。このトンネルが100年以上前に作られたことを思うと、改めてすごいなと実感します。音が反響するトンネル内で行われるミニコンサートも、とっても素敵なのでぜひ!
湊川隧道
住所 神戸市兵庫区湊川町9丁目3−1
アクセス 神戸電鉄湊川駅より徒歩約12分(呑口側)
電話番号 090-5255-6288(湊川隧道保存友の会事務局)
一般公開日 毎月第3土曜日13:00〜15:00
公式サイト http://minatogawa-zuido.com/
湊川隧道をもっと楽しみたい!という方は、湊川隧道から歩いて5分ほどのマルシン市場内にある「湊川隧道カフェ」にもぜひ足を運んでみてください。
「湊川隧道カフェ」は、隧道の一般公開日に合わせて不定期に開催されるイベントショップで、湊川隧道利活用のための活動をおこなっている「湊川隧道部」が運営しています。
隧道カフェでは、神戸の小学生御用達「神戸ノート」でおなじみの「関西ノート株式会社」とコラボした「湊川隧道学習帳」をはじめ、Tシャツやてぬぐい、ステッカーといったオリジナルグッズが販売されています。「今までは湊川隧道のお土産になるようなものがなかったので、皆さんの旅の記念になれば」と、湊川隧道部の部長を務める前畑さん。
地元のお店とのコラボメニューもたくさん!
そのほかにも湊川隧道部では、「地域の宝物である湊川隧道のことをお子さんから大人まで、もっといろんな方に知ってもらえるように」と、まち歩きツアーや子どもを対象とした「トンネル映画上映会」などのイベントを実施しています。
イベントの開催は不定期なので、興味がある方はホームページやFacebookでご確認を。次回の湊川隧道カフェは2023年3月18日(土)に開催される予定です。
湊川隧道部
公式サイト https://minatogawazuido-bu.jp/
Facebook https://www.facebook.com/zuidobu
【取材・文】中田優里奈
神戸在住のライター。関西の観光、グルメを中心に企画・取材・執筆・撮影を担当。書籍『るるぶKids こどもの運動能力がぐんぐん伸びる公園 京阪神版』では神戸市内13ヶ所の公園を取材。地元の魅力を発信したいという思いのもと、日頃から神戸の街歩きをしてネタ探しをしている。
神戸公式観光サイト Feel KOBE
神戸の観光スポットやイベント情報、コラム記事など「神戸旅がもっと楽しくなるコンテンツ」を発信しています。
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