再開発が進む新港町にある『旧住友倉庫』。大正15年に作られた建物で、今は神戸市のものとなり、再開発のため取り壊されることになってます。
100年近い歴史のある建物なので、なくなってしまう前に、市の方に許可をもらい潜入させてもらいました。
もくじ
● 旧住友倉庫どんなところ?
● 静寂の空間、ここは神殿?
● レトロすぎるっ歴史の息づかい
● 気になる今後と入れるタイミング
神戸市中央区新港町7
『旧住友倉庫』があるのは、新港町の水族館「アトア」の東側。第一突堤と第二突堤の間の海に面したところです。
山側は、連節バス「ポートループ」のルートになっている道に面していて、アートイベントによって貼られた神戸市民の顔でにぎやかな雰囲気になってます。
敷地は約8000㎡、6階建ての巨大な建物です。
このエリアは、もともと国が埋め立てたエリアで、同じ時期に「住友倉庫」「三菱倉庫」「三井倉庫」などたくさんの倉庫が誕生。今は水族館「アトア」がある場所も冷凍品を扱う「倉庫」でした。
普段は、ガッチリしたドアに閉ざされ入れない謎めいた空間に、いざ潜入。
海側から入ってすぐに広がる、吹き抜けの空間。天井まで見上げられ、かなりの迫力です。
天井近くに設置したクレーンが、この吹き抜けの間を忙しく動き回っていたんだと思われます。
そして一歩踏み入れて感じるのが、「スパイス」の香り。
長年外国から運ばれてきた「スパイス」を扱っていたそうなので、建物全体に香りが染みこんでるようです。
大人の胸くらいの高さまである鉄の壁。入口の海側にも山側にも設置されてます。
実はこれ「防潮板」。分厚い鉄板には「◯年台風◯号」という手書きの文字が並び、台風が近づく度に、倉庫内を守るために使われていたことが分かります。
50年近く前の数字もあって、倉庫の歴史と働いていた人たちの奮闘をしみじみ想像。。。
吹き抜け部分の両側は、荷を置くための部屋になってます。
東側の部屋に入ってみると、うす暗い部屋に、等間隔に並んだ柱がずらり。
もう電気が通っていないので、小さな窓から差し込む光がなんだか神々しく、シーンと静まりかえって、まるで神殿みたいな雰囲気です。
高めの天井で柱と柱の間がゆるいアーチ状になっているのも、そう感じさせる一因かもしれません。
階によって、天井の高さや光の入り具合が違います。
スパイスの香りの強いエリアもあって「あ、これ八角かな?」とか香りの記憶をたどってみたり…
ほとんど光の差し込まないエリアは、懐中電灯なしでは歩けないほどの暗さです。
数年前まで使われていたので、周囲を照らすと荷物を運ぶためのパレットなどが残っていたりする部屋もありました。
滑車を転がすためでしょうか、平行に溝が掘られた石畳。
映画のワンシーンに出てきそうです。
時代を感じさせる「はかり」。デジタル化されたりして、今はもう必要なくなってしまったのかもしれません。
施設のいろんなところに書かれた文字も、時代を感じさせるものが色々あります。
中でも印象に残ったのが、入口すぐの壁に掲げられた「たばこのめぬ」。いまのように「禁煙」と書かれるより、絶対ダメ感が漂ってる気がします。
万が一商品に引火したら大変ですから、どこよりも早く禁煙が当たり前の場所だったのかもしれません。
ちなみに、山側の窓には、外壁のアート作品となった神戸の人の顔が透かして見えるところがあります。
この倉庫始まって以来のユニークな眺めでしょうね。
『旧住友倉庫』は、取り壊すことにはなってますが「時期」はまだ確定していません。
2025年春には目の前の第2突堤に「神戸アリーナ」が完成する予定なので、それまでにこの場所をスッキリさせておきたい考え。
スケジュール的には春以降、できるだけ早く取り壊しに取りかかることを目指しているそうです。
100年近くこの場所にあった『旧住友倉庫』、リノベーションなどをして利用することはできないのか?と思う人もいるかもしれません。
これまでに、民間事業者などに見てもらい活用の可能性を聞く市場調査なども行われたそうです。
ただ、広くても「柱」が多すぎて利用しにくいこと、古すぎて構造上の資料などがなく耐震などの補強も難しいことなどがあり、前向きな回答は得られなかったとのこと。残念ですね。
ただ、取り壊しまでには何度か入れるタイミングがあります。
いま決まっているのは、1月末の音楽ライブ。3日間に渡って行われます(高校生以下無料)。
さらに、2月以降にもアートイベントの拠点として使われる話が進んでいるみたい。
残り短い間かもしれませんが、神戸の港の歴史を感じる空間を心に残して見てはいかがでしょうか。
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かっこいい
既にホテルに代わってしまった倉庫もあり、また一つ倉庫が消えることに、港に倉庫が有る景色が当たり前だった身からすると、今のうちに目に焼き付けておかなければ思いました
思えば若い人にはメリケンパークが当たり前の景色だけれど、その分メリケン波止場だったことを知る人が少なくなって、綺麗になっていく港を嬉しくも寂しく思います
石畳と平行溝の所は線路とホームのなごりですね。