毎朝山に登る神戸独自の生活文化「毎日登山」とは  Feel KOBE

神戸には、「毎日登山」という文化がある。

六甲山系の山々に毎朝登るという文化で、山筋によって登山会が結成されるほど市民の生活に根付いている。

街と山が近い神戸ならではのユニークな生活文化であり、全国的にも非常に珍しい。

その歴史を辿れば神戸港開港まで遡る。神戸にやってきた外国人が健康維持を目的に、現在の北野異人館街の北側にある背山(せやま)に登っていたのを、明治後期より日本人が真似をして習慣化させたのがはじまり、と言われている。

毎日登山発祥の地「再度山(ふたたびさん)」

毎日登山の発祥は再度山にある「善助茶屋」で、善助茶屋跡には「毎日登山発祥の地」の碑が静かにたたずんでいる。

碑は、再度山ドライブウェイの途中にある大龍寺(たいりゅうじ)山門から5分ほど歩いたところにある。

大龍寺は768年に開山した歴史のあるお寺で、再度山の山名は弘法大師が大龍寺を二度訪れたことに由来していると言われている。

紅葉の時期には、銀杏の落ち葉で一面黄色の絨毯が敷き詰められ、知る人ぞ知る紅葉の名所でもある。

再度山大龍寺山門

Information

大龍寺

住所 神戸市中央区神戸港地方(じかた)字(あざ)再度山1-3
公式HP http://www.tairyuji.com/index.html

大龍寺奥の院をさらに進むと、登山道になり急阪を15分ほど登れば、再度山山頂(470ⅿ)にたどりつく。再度山山頂からは神戸港から大阪湾まで大パノラマが広がる。

最近では、初心者でも楽しめる低山ハイクがブームとなっているが、再度山はその標高以上の景色が楽しめる。これも街と山が近い神戸ならではの魅力かもしれない。

100年の歴史を持つ登山会も

現在、六甲山系の山懐には11の山筋と、それぞれに毎日登山を日課にしている登山会がある。

その中でも最も歴史のある「神戸つくばね登山会」(摩耶山)と、「神戸ヒヨコ登山会」は今年で100周年を迎える。

神戸つくばね登山会(摩耶山)

1922(大正11)年に発足した神戸ヒヨコ登山会の発祥の地は「善太郎茶屋」跡にあり、先ほどの「善助茶屋」から100ⅿほど離れたところにある。

元々は吉岡善助・善太郎兄弟が始めた茶屋で、善助茶屋は貿易商を営む外国人で賑わい、善太郎茶屋は毎日登山で訪れる神戸市民で賑わった、と言われている。

神戸ヒヨコ登山会発祥の地(再度山)

神戸ヒヨコ登山会には、保久良、一王山、布引、再度、高取、旗振、唐櫃(からと)に7つの支部がある。

同会会長の吉野さんは「自分たちは登山に関しては素人、いつまでも謙虚な姿勢で山に登ろうとの思いから『ヒヨコ』と名付けた。100年といえどもまだまだヒヨコ。若い世代に親しまれるよう工夫するなど、次の100年への新たな一歩を踏み出したい」と意気込む。

ちなみに、最多記録保持者は26,100回達成(現在進行形)とのこと。気が遠くなる数字で偉業だとしか言いようがない。

「一王山(いちのうさん)」の毎日登山とラジオ体操

筆者は、とある縁から、家から近い一王山登山会の毎日登山とラジオ体操に参加している。

一王山は阪急六甲駅から徒歩で20分ほど。市内屈指の低山(108.4ⅿ)でアクセスしやすく、登山というより散歩に近い感覚だ。

一王山の山中にある十善寺の境内で、ラジオ体操が毎朝6時と7時にあり(季節により時間変動)、出勤前にひと汗かくのが筆者の習慣となっている。

臨済宗永源寺派 十善寺山門

山門をくぐると、趣のある一王山登山会館があり、そこでラジオ体操のスタンプを押してもらい、登山回数を記録するノートに自ら記帳する。

ノートは回数に応じて分けられている。ちなみに筆者は0~999回ノートだ。まさに“ヒヨコの中のヒヨコ”である。

一王山のラジオ体操には、子どもから90歳を優に超されている人生の大先輩まで、毎朝約100人の方が集まり活気に満ちている。

子どもの頃は何とも思わなかったが、大人になってするラジオ体操は意外としんどいものである。逆に言えば、体の節々が伸びている実感があり毎回達成感を感じてしまうのだ。

ラジオ体操は、誰でも参加でき初心者も大歓迎。夏休みや冬休みになると、元気いっぱいの子どもたちで賑わい、何か懐かしい昭和の風景を感じる。いや大正、明治なのかもしれない。

きっとこの何とも言えない居心地のよさが、人々を虜にし、長い歴史と文化を刻んできたのだろう。

一王山登山の憩いの場 「カミカ茶寮+読林」

最後に紹介するのは、十善寺境内にある茶屋、「カミカ茶寮+読林」。毎朝6時半より営業しており、ラジオ体操後のみんなの憩いの場となっている。

朝の食事メニューはトーストセットとおにぎりセット。どちらも美味しいうえに見た目も美しく朝から少し贅沢で幸せな気分になれる。

トーストセット

おにぎりセット

また予約をすればカミカごはん(ランチ)もいただける。ラジオ体操ついではもちろん、ラジオ体操ついででなくても足を運ぶ価値あり。

カミカごはん

Information

カミカ茶寮+読林

住所 神戸市灘区一王山町12-48
公式Instagram https://www.instagram.com/kamika_saryou/

港町神戸で根付き、今も多くの神戸市民に親しまれる「毎日登山」。

筆者は毎日登山という文化は知ってはいたが、実際参加して、多くの人に愛されてきた理由が分かったような気がする。

今度は一王山以外の毎日登山にも是非チャレンジしてみたい。そこにはきっとまた違う居心地のよさがあるのだろう。

観光や出張で神戸を訪れる皆さまも、神戸に来た際は早起きをして、ぜひ近くの毎日登山にチャレンジしてみてほしい。

取材・文:なべちゃん
神戸市在住。休日は、六甲山や摩耶山など関西の低山巡りが趣味。神戸のまだまだ知られていない穴場スポットを探索中。

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  • jurian

    NHKの吉田類さんの百名山でも、再度山や毎日登山のこと紹介しておりました。
    地元のものですが、再度山山頂には行ったことがなくて、大龍寺から
    かなり探して上りました。とても景色が良くて見晴らしもいいですね。
    最多記録保持者の方は26100回で69年かけていると、話しておりました。すごいですね。

    2022年11月15日5:58 PM 返信する
  • 匿名さん

    私の六甲山のお気に入りは紅葉谷ですね。六甲山上から紅葉谷を通り下山するコースです。土砂崩れで通行止めになっていましたが8月に解除されたそうです。写真を見る限り山道は荒れている様にみえるのが残念。下山すると其処は有馬温泉、金の湯銀の湯で汗を流し、近くでビールを一杯なんて好いでしょう。

    2022年11月13日3:33 AM 返信する