社会起業家「湯川カナ」さんに学ぶ。時代を生き抜き、アイデアを自らカタチにする「起業家精神」とは

人口減少社会、働き方改革、共働き、ワークライフバランス、そしてSDGs。働くこと、生きることを定義することは難しいかもしれませんが、それを考えるきっかけとなる「WHAT’S アントレプレナーシップ?!~時代を生き抜き、アイデアを自らカタチにする力~」というセミナーが神戸起業操練所で開催され、参加してきました。

タイトルから難しいですが、「アントレプレナーシップ」とは、起業家精神とか企業家精神という意味として使われていますが、自分で仕事を生みだし、それを生活の一部とするというお話しが今回のテーマです。


神戸市中央区東川崎町1-8-4

最初の登壇は、社会起業家「湯川カナ」さん。

大学在学中に「Yahoo! JAPAN」の立ち上げに参画し、その後スペインに移住。コラム連載や海外出産などを経験し10年間を過ごすした後に帰国。「生きる知恵と力を高める」をテーマとした「リベルタ学舎」を立ち上げ活動をしています。

ソーシャルビジネスやSDGsという言葉が一般的になりつつある現在において、社会起業家という言葉も少し印象が変わってきているように思います。公益を優先する「社会起業家」と利益を優先する「起業家」のボーダーもなくなりつつある。

湯川さんにとって起業で重要なこと。

①個人の「欲」が社会で共有される「夢」になること
②「自分事」の集まりであること
③諦めが悪いこと

ここで重要な事は、「お金のために働く」という価値が、現在は、趣味・特技・仕事・働きがい・プライベートなど「複合的な価値」として見直されてきているという点だと思います。

よくある話の「やりがいはあるけど給料が安い」「やりがいはないけど給料が高い」という議論から、そもそもそのバランス自体を自分で選ぶ時代になってきていて、二者択一ではない。

ただ、事業をしていくという意味において、「顧客が幸せになり、自分も幸せになることで、社会も幸せになること」というのはポイントになるそうです。

相手のニーズを我が事として考えられるかどうか。それは小さなコミュニティーである家族でも同じ事が言えるかもしれません。

「複合的な価値」は、生きている時間をどう過ごすかということでもあり、それぞれが定義して進めていくこと。それは検証と実践で常にブラッシュアップされていくものなんだろうと思います。

続いて、バルサザーボートリーさん。オーストラリアで起業家のための学校「Laneway Education」に勤務していまして、オーストラリアの起業環境について、また、起業・新事業における思考などについてのお話しです。

海外が先を行っているかどうかは別にして、起業するという側面においては先を行っているということは言えると思います。

それぞれの国において、国民のアイデンティティーや近代の企業が発展した歴史にも関係するところもありますが、オーストラリアは、勤続年数が短かったり、失業保険が充実していたり、起業支援が活発だったりします。

失業保険が充実しているということは、転職活動や起業準備などが行いやすいことを意味し、新卒一括採用や終身雇用といった雇用形態ではないという環境です。

日本と比べてプライベートを重視する傾向があり、「仕事のための生活」ではなく「生活のための仕事」。残業も少なく、メリハリのある働き方をしています。そのため、仕事におけるストレスは日本よりもかなり低いとされています。

起業をしていく上で重要なことは、「MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)」だと語る。

簡単に言うと「アイデアを元にリサーチをした上で、小さく始めてニーズを確認し、フィードバックから改良を重ね、商品・サービスを提供する」というサイクルです。

日本における商品やサービスとの違いで顕著に現れているかもしれませんが、日本は完璧に完成させないと販売しないというスタンスがあったりしますが、海外の場合、そこを把握した上で、圧倒的にコストを下げて販売したりします。

そこには、不完全な部分はありつつも、常にブラッシュアップを続け、ニーズを確認しながら成長させていくというスタンスの違いが現れているように思います。

あと、起業においてどんな人が向いているかというと「フレキシブルな考え方の人」「ネットワーキングが得意な人」だそう。このあたりの印象は、例えば、現在会社員として働いている場合だと、理想のリーダーとして求められるスキルにも似ているかもしれません。

最後は参加者からの質問に回答。写真右側にいるのが、イベント主催者の一人、オーストラリアで「WOMENCANFLY.CO」という事業を創業した會澤貴美代(あいざわ きみよ)さん。アーリーステージの企業運営に奮闘しています。

今回のイベントについては、女性参加者がかなり多く、會澤さんと同じく、仕事とプライベートのバランスを自分なりに再定義していくことへの興味が高かったように思います。

一番印象に残った『「やりたいこと」と「社会のニーズ」のギャップをどうとらえるか?』という質問に対し、「トライ&エラー」だと語る湯川さん。

例えば、「教えること」がやりたい場合、選択肢としては「教員」などが代表格になるかもしれませんが、ワークショップやセミナー、最近ではYoutubeでの成功事例も出てきました。「教えること」の目的をどう定義するのか。

「手に職がある」がある場合は特に注意する必要があるかもしれませんが、目の前にある技術と社会のニーズをフィットさせていく。「やりたいこと」は目的であって、手段として固定化させることについては柔軟に捉えるべきなんだろうと思います。

それぞれの「アントレプレナーシップ」を持ち社会とつながっていく。日本は、そして人口減少が他都市より進む「神戸」は、新たな時代になったと予感させるセミナーでした。


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2019年5月9日

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この記事を書いた人

カズマ

神戸ジャーナル 編集長

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