神戸の景色をテーマに生まれた67色の万年筆インク「Kobe INK物語」がマーケティング大賞の「奨励賞」を受賞。ナガサワ文具センターが開発

神戸市に本社をおく、1882年創業の「ナガサワ文具センター」が販売する万年筆インク「Kobe INK物語」が、第10回日本マーケティング大賞(主催:公益社団法人 日本マーケティング協会)の奨励賞を4月26日に受賞し、表彰されました。

「Kobe INK物語」とは、街から見た六甲の山なみをモチーフにした「六甲グリーン」や、旧居留地の街並みをモチーフにした「旧居留地セピア」など、神戸の景色や街並みをテーマに生まれた67色(2018年6月時点・限定色除く)の万年筆インクです。

奨励賞受賞は、神戸市の企業で初(地域賞は2010年に株式会社フェリシモが受賞)、そして文具業界においても初めてとなる快挙です。

表彰式で登壇した「ナガサワ文具センター」の竹内直行商品開発室長は、「今回の受賞は今までの苦労をすべて忘れるくらい嬉しかったです。 日本は万年筆においては海外に後れを取っているので、これを機にぜひ手書きの良さをもっとたくさんの方に知ってほしいです」とコメントしました。

日本マーケティング大賞は、その年を代表する新しいマーケティング方法やビジネスモデルの開発を積極的に促し、消費者の生活の向上と経済・社会の活性化に資する活動を奨励した商品が受賞している栄えある賞です。

今年の大賞はサントリーの「クラフトボス」、奨励賞は文響社の「うんこ漢字ドリル」など地域賞を含めて9プロジェクトが受賞しました。

「Kobe INK物語」選考理由:低迷市場における新たな価値創造
神戸市に本社を置くナガサワ文具センターが2007年から発売を開始した万年筆用インク商品「Kobe INK物語」は、神戸の「地域の色」をインク色として表現し、低迷していた万年筆インク市場で、単一ブランドで年間3万個の生産量を記録しました。万年筆市場の拡大ではなく、インクの市場の拡大を万年筆の市場の拡大につなげる逆転の発想をとり、「地域の色」と言う新しい価値が、新たな顧客と新たな用途を生み出すことよって支えられた事例です。発売から10年で開発されたインクは、限定色を含め80色以上、日本国内だけでなく米国、豪州、台湾へと出荷が行われています。(日本マーケティング協会)

「Kobe INK物語」誕生のきっかけ

誕生のきっかけは震災から10年経ち「神戸の色でのお礼を伝えたかったから」

「Kobe INK物語」が誕生したのは2007年。1年で約6色ずつコンスタントに作り続け11年、現在では67色を展開しています。

誕生のきっかけは阪神淡路大震災。大打撃を受け、その後10年間は立て直しに必死で、ようやくまたビジネスの目途が立ったころ、「文具の分野できれいな街神戸をPRする方法はないか?」「神戸らしい色でお礼の手紙を書きたい」と考えたのが始まりです。

そんな時、ふと眺めた六甲山の木々の色を切り取って作ったのが1色目の「六甲グリーン」。当時グリーンの万年筆のインクはとても珍しいものでした。

山とくれば次はやはり海。「一番きれいな青色のインクを作ってやろう!」とできたのが2色目の「波止場ブルー」。3色目は一番きれいな日暮れ時の街色をモチーフにした「旧居留地セピア」でした。

神戸を代表する「山・海・街」の3色を発売したころから少しずつ、神戸の万年筆愛好家の間で「Kobe INK物語」が広まり始めました。

万年筆の再ブームと海外での人気

下火だった万年筆を取り巻く状況が、フェルメール展とのコラボで一変!

「Kobe INK物語」を発売し始めたのはちょうどiPhoneの誕生と同時期で、デジタル化がどんどん進行していました。それに伴い文字を書かない人が増え、万年筆を使う人はどんどん減っていき、インクの売り上げも日に1個程度。「Kobe INK物語」はまさに時代に逆行した商品でした。

しかし、2012年にフェルメール展とのコラボ限定色(現在は売切れ)を発売してから、状況が一変。それまでは万年筆が好きな人が手に取る商品だったが、全く万年筆に縁がなかった人たちもフェルメールがきっかけでまずインクを手に取り、インクを使ってみたいから万年筆を購入するという、逆転の現象が起きたのです。

万年筆ブームの再来。その人気は神戸から日本全国、そして海外へ

フェルメール展とのコラボ色をきっかけに、今まで万年筆に縁がなかった人にも「Kobe INK物語」が浸透し、万年筆ブームが再来。

「Kobe INK物語」発売当初は月に30個程度しか売れなかったインクですが、2017年には年間3万個も売り上げました。

最近では文字を書くだけでなく、コレクションして楽しむ方、カラフルなインクを使って絵を描く方、少し変わった使い方だとカラーセラピーのような使い方をされている方もいます。また、神戸の学校の先生はピンクやオレンジなどのインクを使って採点を行っている方も少なくなく、生徒も喜んで勉強してくれると評判だそうです。

その人気は日本国内にとどまることなく海外へも普及しており、台湾をはじめ韓国・中国・東南アジア諸国など様々な地域から、わざわざ神戸にインクを買いに来るファンも少なくありません。

東京限定色や10周年記念色も発売!

特に海外のお客様からの問い合わせが多かった銀座・伊東屋では昨年2月から「Kobe INK物語」の取り扱いが始まりました。カラーバリエーションが多いので、インクの色を楽しみたい方が楽しそうに買っていかれる光景もよく見られます。

取り扱いを記念した東京限定色として、神戸人から見た銀座の色である「銀座ゴールドセピア」色が出来上がりました。とても珍しい色なので、大変人気となっており、店舗としては銀座・伊東屋とナガサワ文具各店でだけ購入できます。

また、5月26日にはナガサワ文具センターのコーポレートカラーを万年筆インクカラーとして発売開始。30年ほど前に「クラシカルモダン」をテーマに神戸をイメージしたブルーで、店舗ではPenStyle DENショップでしか手に入らないプレミアムなカラーです。

奨励賞を受賞して…今後について
ナガサワ文具センター商品開発室長 竹内直行(たけうち なおゆき)さんのコメント

受賞をきっかけに「Kobe INK物語」を若い世代に知ってもらえればいいなと思います。思いを伝えるのはやはり「手書きの文字」なんです。特に万年筆は手間がかかって面倒くさいものなんですが、その面倒くさいものを使いこなして、さっと万年筆を取り出して手書きで思いを伝えるのってすごくかっこいいじゃないですか!

「神戸から手書き文化のすばらしさ」を発信できればとても嬉しいです。

神戸ならではのまち歩きや体験プログラム「おとな旅・神戸」(2013年開始)に「Kobe INK物語」のコースが設けられており、神戸観光にも一役買っている「ナガサワ文具センター」が受賞ということで、非常にうれしいですね。

一度お店で手にとってチェックしてみてはいかがでしょうか。

◆関連リンク
ナガサワ文具センター – 公式サイト

 

この記事を書いた人

カズマ

神戸ジャーナル 編集長

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