地域へのICTの普及・浸透・スマートシティの創造を目指す「地域ICT推進協議会(COPLI)」が、神戸電子専門学校で『地方IT企業の戦い方~長野県の事例~』をテーマにセミナーを開催しました。
講師は、長野県のシステム開発企業である株式会社ユリーカの代表取締役 青山 雅司(あおやま・まさし)さん。神戸のIT企業・システム開発会社などの社長や社員の方が集まって、長野の事例を聞きながら、地方IT企業としてどう強みを活かしていくのかなどを考えました。
地方IT企業としてどんなことを考えてるのか会社の裏側も知れるので、IT業界や地方での働き方に興味のある方もぜひ見てみてくださいね。
Index
株式会社ユリーカとは?
株式会社ユリーカ(以降、ユリーカ)は、長野県の真ん中のほう、松本市の南に位置する塩尻市にあります。1981年に設立した社員約80名のシステム開発会社で、40年以上の実績とノウハウを活かして、地方にいながらも東京の案件を受託するという強みをもつ会社です。
地元に戻って「Uターン・Jターン転職」、移住をきっかけに「Iターン転職」してきた方や、子育てをしながら在宅勤務をしている方などもいて、ライフワークバランスの面でも魅力のある会社なんだそうです。
ちなみに塩尻市は、江戸時代の宿場町「奈良井宿」や、創業80年以上の老舗ワイナリーなどが有名で、観光で訪れたことのある方もいるんじゃないでしょうか。
経営難をどう乗り越えたのか
地方IT企業の中では歴史のある「ユリーカ」ですが、多くの経営課題を抱え「口座残高10万円」と絶望的な財務状況の時代があったんだそう。
当時の根本的な問題として考えたのが、「右肩下がりの経済」の中で、古い経営の教科書に従っていないか?というポイントです。
そこで解決策として、地方の強みである退職者が少ないからこそ蓄積されてきたノウハウを活かして、ニアショア開発(都市圏などからの受注)で収益性を上げ、少しずつ経営を安定させていったんだそう。
さらに、新卒や未経験採用にシフトし、教育体制を厚めに取ることで、技術者を育てていきました。
とくに印象的だったのは、地方で受注単価が安いことが、社員の給料の低さにつながり、年功序列で給料があがるため若者の給料が下がってしまうということ。
利益の大きい東京の案件を獲得することが給料アップにつながるとともに、教育体制がしっかりしているとなると、地方で働きたいと考えている人には嬉しいですよね。
実際に、高校で新卒採用の合同説明会に行った際には、体育館いっぱいになるほど集まって、ほぼ全員が会社見学の希望を出してくれるくらいだったんだとか。最近の新卒採用では、県外からの人も来てくれるそうです。
地方の企業は、人材不足が大きな課題の1つだからこそ、売上とともに社員の成長や働き方などもしっかり考えてくれているのかもしれませんね。
地方IT企業ならではの強みって?
特に東京一極集中が進んでいるIT産業において、地方ならではの強みって何なんでしょうか?
製造業が多く、プロダクト開発・IoT(モノをインターネットでつなぐ技術)に活かせることや、退職者が少ないからこそのノウハウの貯めやすさ、観光客が多くブランディングのチャンスなどなど、長野を例に地方の強みを紹介。
ほかにも、高知県のクリエイティブ町おこしや、和歌山県のロケット町おこし、沖縄県のグローバル町おこしなども挙げ、地方が持っている強みを活かした方法の話もありました。
地方ならではの強みを活かして企業が増えていくと、転職を機に地元に戻ってこれたり、これから社会に出ていく学生にとって地元就職の道ができたりと、いろいろな選択肢が増えるのは嬉しいところ。
実際に町おこしによって、若手が地元に戻ってきて、あらたなベンチャー企業が生まれている地域もあるそうです。
最後に、外から神戸を見たときの強みとして、神戸牛・ゴルフ場・日本酒生産量などをピックアップ。
神戸だからこその強みは、神戸に住んでいる方・神戸で働いている方がよく知っているはず、「ユリーカ」の話が少しでもヒントになればと締めくくりました。
セミナーの後は、参加した神戸のシステム開発会社の社長や社員の方が集まって意見交換も。同じ境遇にいるからこその人たちと話せることで、地方IT企業として今後の戦い方を模索する良い機会になったんじゃないでしょうか。
いかがでしたか?会社としてどう地方IT企業が戦っていくかという話の中にも、給料アップなど働く立場としても嬉しいポイントや地方での働き方が垣間見える内容だったんじゃないかなと思います。
地域ICT推進協議会(COPLI)では、定期的に地域のICT(情報通信技術)に関連するセミナーを開催しています。IT企業にお勤めの方や、IT業界に興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。
企業の方・行政関係の方だけでなく学生も参加できるので、将来IT企業に就職したい、就活でIT業界について調べているなど気になる方はぜひ。
◆関連リンク
・地域ICT推進協議会 – 公式サイト
・株式会社ユリーカ – 公式サイト
神戸ジャーナル 編集部
ライター一覧