神戸市内で活躍するクリエイターの情報を発信する『CREATORS LETTER』。
クリエイターと企業をつなぐウェブサイト「KOBE CREATORS NOTE」と連携して、デザイナーやディレクター・カメラマンなどさまざまなクリエイターの作品や活動への想いをご紹介していきます。
森 夏未(もり・なつみ) デザイナー 木工作家
1982年、神戸市生まれ。2005年、成安造形大学 住環境デザイン学科卒業。
卒業後、設備の大手企業に就職し奮闘の日々を送っていましたが、モノづくりと密接に関わりたいという想いは冷めず、長野県にある木工の技術専門校へ入り家具づくりのノウハウを学びました。
その後、徳島の家具製作会社へ勤めたのち、神戸へ帰郷し結婚出産。現在は二児の母です。
一度ものづくりから離れ、子育てと父親の会社の手伝いに専念する数年を過ごしました。
母として家族として「こうであるべき」に囚われ、私自身の夢や想いというものは押し殺した数年でしたが、好きなことに挑戦しない人生は勿体ない!と一念発起し2019年に独立。
現在は、木工デザイナー・作り手として制作まで手掛けながら、百貨店や全国各地のショップなどで取り扱っていただいたり、展示会に出展しています。
幼少期から図画工作に目がなく、こだわりが強すぎて、家族から「アロンアルファ」と揶揄(やゆ)されるほど。学生時代にはお菓子作りにハマったりと、とにかく「何かを作る」ことが大好きでした。
きっかけは、大学のゼミでカフェ一棟まるごと建築したことでした。建築学科の主なカリキュラムは専らプランして「模型」を作ることですが、ゼミの仲間と皆で実際にデザインから施工まで、自らの手で「本物」を作り上げた経験には心を大きく動かされました。
ブランクはありましたが、思いを募らせ独立して4年目になりました。
子どもたちに時々聞かれます。「なんでこの仕事をしているの?」と。
味気なく答えるならば、“好きだから”なのですが、笑。自身の作品からまた「新たな時間が生まれる」こと、「人とのつながりが生まれる」ことは、これ以上なく幸せだと感じるからです。
手から生まれたものは、同じものでも少し違う、全然違う。そういうものを両手に取り「どっちがどうで、こっちがこうで」と吟味していただく時間は私にとって宝物であり、きっとそれこそが本来のものを買い迎えるときの『悦びに入る』ということなのだと思うのです。
昔はそれが当たり前だったこと、ただの原点だと思いますが、人の手から一つ一つ生み出すものはやっぱり特別だと思うようになり、今の仕事にたどり着きました。
大量生産では得られないモノ『時間』がそこにはあると思っています。
生まれも育ちも神戸市須磨区。赤ちゃんの頃から高校を卒業するまで、須磨の海とともに育ちました。
大学以降、日本のあちこちを転々としましたが、出産を機に地元 須磨へ帰郷しました。山と海に囲まれた自然が豊かで、そこそこ便利と「住み良さ」は格別だと感じています。
これからも神戸で活動し、子育ても続いていきますので、神戸の発展は地元民として切に願うところ。この地から発信し制作し活動を広げていきたいと考えています。
想いはどこからともなく伝わるのでしょうか。
2020年には、神戸観光局さんからお話をいただき、“神戸ならではの特別な空間”を体験できるプログラム「おとな旅・神戸」(現在運営移管中)でワークショップ開催のお仕事をいただきました。
パン皿とバターナイフを作るという内容の「ワークショップ」だったのですが、ありがたいことに多くの方が抽選漏れするほどの人気企画となり、やりがいのある良いお仕事にめぐり合えました。
昨年は、朝日放送のテレビ番組『ココイロ』で、神戸市須磨区の一人として出演させていただいたり、思いがけない角度からお声がけいただくことが増え、日々の活動も頑張っていれば誰かに伝わる。そんなやりがいを感じている今日この頃です。
&KOBE
神戸市の方から「神戸で活動する一人」としてお声がけいただき、台湾にあるライフスタイルの百貨店「誠品生活」さんにて『&KOBE』という神戸市役所経済観光局主催の「企画展」に出展することになりました。
名だたる企業の方々に混ざり恐縮しましたが、なるべく神戸らしいデザインのものをと「誠品生活」さんと検討を重ね、当日を迎えました。
企画展は盛況に終えることができ、終了後の3ヵ月間限定で「KOBEブランド」として継続販売もしていただけることに。
限られた出展者のみが継続販売いただけることになっていたので、選んでいただいた時はとても自信になりましたし、ご購入いただいた台湾の方から「ファンになりました。」と、直接メッセージを頂けたのがすごく嬉しかったですね。
CUCINA ITALIANA小松
京都でオープンされたイタリアンレストランで使用する「カトラリースタンド」と「メニューボード」のデザイン制作をお手伝いさせていただきました。
シェフ兼オーナーの祖母様が住んでおられた「ご自宅」を改装してお店にすることもあり、その大事な「歴史と想い」を受け継ぐために、改装により取り外してしまう「梁(はり)材」を再利用して制作したいというご希望でした。
長年家を支えてきた「梁材」の経年変化した表面をあえて残すデザインにしようということになり、片面をそのまま生かした仕上がりに。希望の使い勝手や、使用するカトラリーと合うように試作を繰り返し制作させていただきました。
イタリア料理店「PONTE VECCHIO」で修行されてきた一流シェフのお店です。是非、一度足を運んでみてください。
現在はありがたいことに、全国各地のショップやお客様から沢山のご依頼をいただいております。
昨年、建築士の夫と共同でデザイン設計したアトリエ「yohaku」では、ワークショップなども随時開催しております。
同じくしてモノづくりが好きな方と、リアルで繋がることができる空間として今後も展開していけたらと考えています。
作品づくりとしては、地元の木材を使用した活動への挑戦や、自分の中にある感性を形にする範囲を大きくし、もともと興味のあった「家具」や「インテリアデザイン」の仕事へも裾野を広げていけたらと思います。
今にたどり着くまで紆余曲折しましたが、母であっても「好きなことを仕事にする」というのは大きな希望かなと。できるかどうかの環境やタイミングは人生を大きく左右しますが、一念発起までの苦悩があったからこそ、伝えられる想いもあります。
同じように一歩が踏み出せないで迷っておられる方のサポートやクリエイティブの相談ごともお仕事にできたらと、夢は尽きません。
森 夏未(もり・なつみ) デザイナー 木工作家
morinatsumi | Kobe Creators Note|神戸クリエイターズノート
神戸市内で活躍しているクリエイターと企業がつながる「KOBE CREATORS NOTE」。興味がある人は、ぜひ、サイトへ。
このみ
花や夕焼け空を眺める時間が好きです。
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