神戸市では、独自の文化財の保存・活用制度として『神戸歴史遺産制度』を設けてます。
2021年に第1回の認定を行い、第2回となる今回は、次の「5件」が神戸歴史遺産として新たに認定されたようです。
(1)旧住吉村吉田家関係資料
(2)神戸布引おんたき茶屋
(3)関西ユダヤ教団・シナゴーグ
(4)金星観測記念碑(金星測量標柱)
(5)旧雲禅寺伝来品及び豊浦地区数珠繰り資料
(1)旧住吉村吉田家関係資料
住吉村を代表する豪商吉田家に関係する資料群です。吉田家は、住吉村の庄屋を務めるとともに製油・酒造・廻船などの事業を手掛けました。
また、文庫「聆濤閣(れいとうかく)」に一級の文化財を収集し、武士や公家、学者等に広く公開しました。
今回認定する資料からは、これらの知のネットワーク上の人物らと吉田家の交流が見てとれ、住吉歴史資料館において、研究と活用が進められています。
所在地:神戸市東灘区住吉宮町7丁目1番2号 本住吉神社内
所有者:一般財団法人住吉学園
管理者:一般財団法人住吉学園 住吉歴史資料館
(2)神戸布引おんたき茶屋
布引滝は、神戸を代表する観光地として親しまれ、明治初期に近代公園として布引遊園地が整備されました。
同時期に、外国人のリクリエーション登山にならい、茶屋が拠点となって、ハイキング文化が育ちました。まさに、神戸の、全国の山遊びの原点と言える場です。
また、当時珍しかった擬岩擬木の擁壁など名勝地を愛でる自然享受のスタイルが継承されています。
所在地:神戸市中央区葺合町字布引遊園地45
所有者:個人
管理者:神戸布引おんたき茶屋保存会
(3)関西ユダヤ教団・シナゴーグ
シナゴーグとはユダヤ教の会堂を意味し、日本では神戸、東京などに存在します。このうち、関西ユダヤ教団・シナゴーグは日本で現存最古のシナゴーグです。
北野地区には開港以来、外国人が多く居住したことから、特色ある宗教建築も現存しています。
関西ユダヤ教団・シナゴーグは、北野地区そして神戸の多宗教、異文化交流の歴史を伝える建造物のひとつとして貴重です。
所在地:神戸市中央区北野町4丁目69番地1 66番地1
所有者:宗教法人 関西ユダヤ教団
(4)金星観測記念碑(金星測量標柱)
明治7(1874)年12月9日、フランスによって、地球と太陽との距離を計測するために金星の太陽面通過の観測が行われました。
これを記念して、現在でも金星台と呼ばれている観測地跡に建てられたのがこの記念碑です。
開港後間もない神戸が国際的な天文観測の場所として選ばれ、歴史的な快挙が達成された場所であったことを物語る貴重な存在と言えます。
令和4(2022)年3月には、横浜・長崎とともに日本天文遺産に認定されました。
所在地:神戸市中央区諏訪山町1番地 (諏訪山公園内)
所有者:神戸市
管理者:神戸諏訪山ふれあいのまちづくり協議会
(5)旧雲禅寺伝来品及び豊浦地区数珠繰り資料
江戸時代前期に創建され明治時代に廃寺となった雲禅寺の存在を明らかにし、西国三十三所信仰の様子や地域の歴史を伝える貴重な存在と言えます。
また、厨子の銘文から、施主は地元と大坂在住者、仏像は京都で制作されたものであるという地域的広がりを読み取ることができます。
さらに、明治政府による廃仏毀釈で廃棄されることなく、数珠繰り等を通して集落で信仰され続けた点が、廃仏毀釈の受容を考える上で興味深い資料と言えます。
所在地:神戸市北区長尾町宅原927
所有者:豊浦自治会
『神戸歴史遺産』では、今までに国・県・市から指定された文化財に加えて、地域の歴史的な建造物・地域で伝えてきた歴史的な伝統行事・地域の歴史を語る文書などを認定していくんだそう。
身近な建物や文化が保護され、後世に伝わっていくための助けになれば良いですね。
◆関連リンク
・神戸歴史遺産 – 公式サイト
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