神戸市内で活躍するクリエイターの情報を発信する『CREATORS LETTER』。
クリエイターと企業をつなぐウェブサイト「KOBE CREATORS NOTE」と連携して、デザイナーやディレクター・カメラマンなどさまざまなクリエイターの作品や活動への想いをご紹介していきます。
24d-studio 平川 フミオ(ひらかわ・ふみお) デザイナー/建築家
1975年 神戸市 生まれ。
2000年 Fashion Institute of Technology (New York, USA) インテリアデザイン学科 卒業。
2005年 Southern California Institute of Architecture (Los Angeles, USA) 建築修士課程修了。
高校卒業後にアメリカに移り、大学ではニューヨークのインテリアデザイン学科を経て、大学院生活はロスアンゼルスで過ごしました。修了後はまたニューヨークへ戻って建築設計事務所で勤務していました。
自身のスタジオでは、妻と共同で、建築からインテリア規模のプロジェクトと多彩なスケールに関わっています。
モノづくりも積極的に手がけており、自主制作で「照明器具」や「家具」などのプロダクトデザインにも取り組んでいます。
とにかくデザインが関与する分野で要望があればいろいろと関わることを心がけており、それが自身の成長につながるということを信じています。
現在は妻と一緒に立ち上げたスタジオ「24d-studio」と並行して、京都精華大学建築学科にて専門分野である「建築系デジタルデザイン/コンピュテーショナルデザイン」の講師を勤めています。
些細なモノの配置により空間をコントロールすることで新しい環境が生まれ、利用者の行動や気持ちも変貌できるということに子供のころから興味がありました。
特に室内空間という領域でそれを成し遂げたいと感じ、「インテリアデザイン」の分野で勉強をすることに。
学科で出会った恩師の設計ゼミを受けたときに、「もっと多様的に建築と都市やプロダクトやグラフィックデザインなどの概念を勉強してみて、今想像できていないデザインの世界観を広げてみてはどうか」 といろいろと厳しながらも励ましのアドバイスを頂きました。
自分が提案したデザインが形だけのモノでなく「しっかりとした理屈と根拠に基づいて求められていなかった回答以上のものを提案したい!」という気持ちがすごく強く芽生えました。
3年生のゼミ終了後に恩師の建築事務所でアルバイトしてみないかと誘われて、大学に通いながらもバイトをしていました。そこで見た作業風景は、すごく刺激になりました。
スタッフやインターンは多彩な経験を持ち、一緒に作業していたプロジェクトでは全員の異なる意見がいつしか新しい価値観に変わっていき、それが新しいデザインに変貌していくというコラボレーションプロセスを体験したときに建築という分野に関わることを志しました。
ニューヨークの建築事務所に勤務していた時にリーマンショックを体験し、事務所の同期や大学時代の友達が次々と解雇になったことがきっかけで同じ大学院で出会った妻と一緒にブルックリンで小さなデザイン事務所を設立しました。
日中は事務所で仕事をし、夜はアパートで個人の仕事や多くの建築コンペに打ち込んでいました。
応募したコンペの一つが入賞作品として選ばれ、偶然にも東京で実施されるイベントだったため、当時勤務していた事務所を退社し一時帰国しました。
Crater Lake
制作にが終わったらまたブルックリンへ戻ろうと計画していましたが、東京に足を運んだことでいろんなご縁に恵まれ、しばらくの間は地元の神戸で活動してみようと思いました。
しかし、神戸に留まり京都で講師を勤めているうちに海や山などの大自然に囲まれた毎日から新たな刺激を再発見することが新鮮になり、この場所だからこそ得られる価値観やライフスタイルが、自分たちのメンタル面を向上させるだけでなく、もっとデザインにも活かされるのではないかと感じ、今に至ります。
Crater Lake
神戸ビエンナーレで発表した「Crater Lake」という作品は、当時ポーアイしおさい公園に設置されましたが、これらはポーアイから眺めた「摩耶山」や「六甲山」と「ハイキング体験」がもたらした作品だと思います。
訪れる人に見てもらうだけでなく、家具のように座って「神戸の自然」を見つめなおして、神戸の素晴らしさを感じてもらいたいという思いで制作しました。
作品が発表されるといろんな人たちに接してもらえましたが、意外なことに多くの子供たちに利用されました。子供が大はしゃぎで登ったり周辺を走り周り、中にはミニ滑り台のように遊具のように楽しく活用していました。
これらのインスタレーションの影響もあって、もっと遊び心があるデザインを融合してみようと模索した結果、照明器具のデザインも手掛けるようになりました。
Hope Tree
現時点まで制作してきたほとんどの作品は、無意識に建築の原点は自然という姿勢で取り組んできたように思えます。
その中で最初に日本で制作したインスタレーション作品として「Hope Tree」が自分たちの原点だと感じています。
コンテナ内という限られた空間の中に、どのように自然を落とし込むかということを模索した回答として、コンテナ空間を光で覆うという発想でアプローチしました。
木漏れ日があふれるように空間内を照らすという神秘的でシンプルな発想を支えるのが「木の幹」を象徴する中心にあるオブジェ。内壁と天井パネル面を支える要素となっており、建築で例えると大黒柱に相当するエレメントです。
アーチだらけの家
「アーチだらけの家」では、今までのプロジェクト経験を職住融合住宅の在り方について再定義したリノベーションプロジェクトで落とし込んだものです。
既存の建物は耐震補強や環境設備面の提案だけでなく、印象的に閉鎖的な内部空間をどのように開放的に施せるかを課題に取り組みました。
一般的な各部屋を完全に区切ってしまう壁を排除し、アーチ開口耐力壁を計画的に導入することで、各スペースが開放的になることを目指しました。
どの部屋にいても自然光をいっぱいに浴び、家族同士のオープンなコミュニケーションをもたらすライフスタイルを送ることができるのではと考えました。
モノという形をインテリア空間に落とし込むことで新しい自然を表現できないかという実験を行い、「Airy」で始まったシリーズは強化和紙を駆使して多彩な形状とサイズ展開を提案し、購入者自身が簡単に組み立てられることで愛着が湧くものを提供しました。
自身のオンラインストアをデザインして設立して販売を試みたり、ミラノサローネに出展した結果、海外で講評を受けいろんなストアに使用して頂くまでになりました。
スタジオで自主制作が行えるため、プロダクトデザインの分野では建築で応用したアイディアを小さいスケールに落とし込むというエクササイズを度々行っています。
提案されたデザインは、期間限定でオンラインストアで販売しています。
今まで取り組んできた作品を思い返せば、接してくれた人たちは私たちが予想もしない意外なかたちでデザインに接してくれています。
その光景をみるといつも刺激的な発見であり、異なる目線で、常に柔軟で多様な姿勢でデザインに接することで「新しい価値観が芽生える」ということにいつも気づかされます。
これからも初心を忘れず、この世界を見つめ体験し、それらを自分たちのデザインに取り入れることで、今までにない斬新な空間を生み出せるのではないかと思っています。
24d-studio 平川 フミオ(ひらかわ・ふみお) デザイナー/建築家
dstudio|神戸クリエイターズノート
神戸市内で活躍しているクリエイターと企業がつながる「KOBE CREATORS NOTE」。興味がある人は、ぜひ、サイトへ。
このみ
花や夕焼け空を眺める時間が好きです。
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