増え続ける「空き家」の解決を兵庫区から。シンポジウムに行って、実際の空き家の利活用事例まで

兵庫区役所で開催された「神戸市兵庫区から空き家問題を考える シンポジウム&フェスタ」に行ってきました。

地域で活動するNPO法人「兵庫区山手を活かす会(代表:塔筋 幸造)」が主催したイベントになりまして、全国的な課題となっている「空き家問題」について、兵庫区でどう取り組んでいくべきかについて考えるシンポジウムとなっています。


神戸市兵庫区荒田町1-21-1

そもそも空き家問題についてですが、言葉の通りとなりますが、実質的に使われていない家がたくさんあって、それが街の空洞化に繋がっているという話です。

基本的には核家族化が進み、親が所有していた家を相続などしても、所有権は維持していますが利用せず放置されているという状態です。

シンポジウムは、兵庫区の空き家対策アドバイザーで、兵庫県立大学大学院 教授の西井 進剛(にしい しんごう)さんのお話しがメインです。これまでふわっとした理解をしていましたが、経緯や問題点の整理などをしていきます。

空き家を整理すると、以下のようになるそうです。

・二次的住宅(常時住んでいないが使っている)
・賃貸要住宅(貸したいのに借り手がいない)
・売却用住宅(売りたいのに買い手がいない)
・その他(用途がなく使われていないか分類不能)

分類は様々ですが、いずれにしても誰かが所有している状態ですので、誰かの持ち物ということになります。核家族化やこれまでの人口増加、また「日本人が新築を選ぶ傾向にある」ということもあるでしょう。

この問題は今に始まってものではなく過去からずっと続いてきたもので、最近になってよく聞くのは、「いよいよマズイよね」という段階だから。

それぞれの地域でバラツキはありますが、兵庫区の場合の空き家率は「16.5%」になるそうで、6軒に1軒が空き家という計算です。これは兵庫区全体での数字ですので、もう少し絞った地区レベルでみると、割合が高くなると思われます。

「建物を壊して更地にしたら税金が上がる」ので建物が古くてもそのままにする、「再建築ができない」ので不動産として流通しない、「所有者に思い入れがある」から売却しないなど理由は様々で、専門的に「空き家ゾンビ」と呼ばれるそうですが、空き家が増殖し続けています。

直接的な影響としては、「防災性の低下」「防犯性の低下」「ゴミの不法投棄」「衛生の悪化」「景観の悪化」などがあげられます。

ちなみに、「空き家バンク」という取り組みがありますが、そもそも空き家の登録が進まないなど、実質的に改善に大きく寄与しているという状況ではないそうです。

西井さんの提言としては「空き家クラスター戦略による地域活性化」ということで、つまり利活用していこうと。住宅街に点在する空き家を一定のグループとして全体で利活用を考えるということです。

制度的な課題や、住宅売買市場での流通などにも様々な課題がありますが、現状、目の前にある空き家をとにかく活用していこうということで、他都市の事例などの紹介がありました。

・起業家向けのシェアオフィス・コワーキングスペース
・シニア世代の起業支援施設、シェアオフィス
・空き家を利用した図書室
・ゲストハウス、シェアハウス
・マイクロシアター(空き家での映画館)

全国的な課題であることから多くの先行事例がありますが、それぞれが地域の人と議論を重ねて運用されていることは共通しています。それぞれに合った取り組みが必要とのこと。

兵庫区の目指すべき方向性として提言していたのは、「価値が見込めない物件を優先する」「地域を巻き込む」「段階的アプローチ」。取り組み方という意味で、兵庫区に限った話ではないと思いますが、ある程度長く利活用していくために、決定プロセスに地域を巻き込むということは非常に重要だろうと思います。

あと、利用したいという人が地域外にいる場合、「空き家」を探すことはハードルが高かったりします。そのあたりは、行政系が運営する「すまいるネット(神戸市すまいとまちの安心支援センター)」に相談したり、今回のイベントを主催した「兵庫区山手を活かす会」など地域の団体に相談するなどした方がよさそうです。

シンポジウムの後は、空き家が存在する前提で、「遠隔カメラ」を使った見守りシステムのお話し。一定期間は無料で使えるそうです。

空き家にカメラ(モーションセンサー・温度センサー付き)を設置して、変化があればインターネットを通してスマホに通知がくるような仕組みです。また、複数の空き家所有者がグループとなり、負担の少ない形で当番を回していくという運用が想定されています。

利活用をしていくことも検討しつつ、利活用できない空き家に対する対応も重要だろうと思いますので、ITを使った新しい地域住民の連携が今後活発になっていくかもしれません。

また、全国的な問題であることから、制度的な課題も大きく関係してくるところでもありますので、全体の母数が減る大きな枠組みと、現状ある空き家の活用や安全な維持というのも、こういった仕組みで解決されることが重要でしょう。

シンポジウムの後には、実際の空き家活用事例を見学してきました。具体的な場所は公開していませんが、兵庫区内にある空き家をギャラリーや地域の活動に役立てています。

道全体が写っていませんが、目の前にある道路は建築当時の基準になっていると思いますので、建て替えは難しいエリアだと思います。

また、持ち主の意向などもあり、この場所を活用していくという選択をした訳ですが、外観などはかなりキレイに見えます。よくイメージしている空き家とはずいぶんイメージが違います。

見た目上も廃墟みたいになっていて倒壊しそうというのがこれまでイメージしていた「空き家」だったのですが、逆に言うと、そこまでじゃない「空き家」もかなり多く存在しているということでしょう。

普段通っている道でも「空き家」がどれだけあるかと気にしたことはありませんが、割合的に言っても、実は結構存在しているんだと改めて実感しています。

こちらが中の様子です。かなりキレイです。こちらは空き家状態になる前にリフォームをしていた物件でしたので、スムーズに利活用へと進んでいったという側面があるかもしれません。

「空き家=古い」ということもないようですし、柱など構造的なところから間取りなども大きく変更できないなど一定の制約もあると思いますが、リフォーム後の今回の物件については、間取りについてはそこまで使い勝手に影響があるとは思いませんでしたし、とにかくキレイです。

住宅街の中にあって、用途は個別事情に合わせて相談ベースになるとは思いますが、取得価格とリフォーム費用など、新築住宅や中古住宅に比べて価格メリットがあれば、最近の住宅ニーズの多様化を考えるとかなり可能性のある分野であるような気もします。

今回の物件では、展示スペースや保管スペースなどが設けられていました。ここでは日本酒が保管されています。自然派純米酒を扱う「岡酒商店」さんのお酒だそうです。

改めて思ったのが、フル稼働を前提とした「空き家利活用」ではないということ。こういった展示や定期的な集まりなど、個人住宅ですので集会所とまで広くはありませんが、要はそういった使い方ができるということです。

シェアオフィスやコワーキングスペースが駅近くにたくさん誕生している状況の中で、住宅街には可能性のある物件が多くあることを感じています。

アーティスト系やデザイン系の事務所など業種などがマッチすれば、そういった利活用も考えられるんじゃないでしょうか。

あと、正直これまで空き家は目の前にある課題だと思っていませんでしたし、そもそも周辺で「うち空き家持ってるんだよね」って話を聞かない。個人資産の話なので、あまり話題に上がらないという側面があると思います。

実際に空き家を見てみると、使ってみたいって話も増えていくのかなと思います。ぜひ、何かの機会に「空き家」や「空き家の利活用事例」を見学に行ってみてはいかがでしょうか。

◆関連リンク
特定非営利活動法人 兵庫区山手を活かす会 – 公式サイト

 

この記事を書いた人

カズマ

神戸ジャーナル 編集長

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